2021.03.11

【11月6日】第6回円卓会議を開催しました。

2020年11月6日(金) セルリアンタワー東急ホテル39F「ルナール」において、第6回円卓会議を開催致しました。

第6回となる本年度のテーマは「コロナ×都市」。これまで予見しなかった感染症に対する対策や経済、教育への影響、さまざまな新しい生活様式への変化、また、それらを踏まえた今後の希望や可能性についても議論いただきました。

【開催概要】

日 時 2020年11月6日(金) 15:00-17:30
会 場 セルリアンタワー東急ホテル「ルナール」
テーマ コロナ×都市
スケジュール 15:00 開会挨拶
代表幹事 小川 泰史(東急株式会社沿線開発事業部事業推進グループ 統括部長)

15:05 基調講演
「コロナ禍からの脱出」のための知の構造化
株式会社三菱総合研究所 理事長 小宮山 宏氏

15:35 沿線概況報告
東急株式会社 沿線開発事業部 事業部長 西村 隆徳氏

15:55 フリーディスカッション

17:30 閉会
ご出席者 ■ アドバイザリーボード・メンバー
株式会社三菱総合研究所 理事長
小宮山 宏様

一般社団法人俯瞰工学研究所 代表理事
松島 克守様

東京都市大学 学長
三木 千壽様

ランドスケープアーキテクト / 東京都市大学 環境学部 特別教授
涌井 史郎様

NPO法人CANVAS 理事長 / 慶應義塾大学 教授
石戸 奈々子様

千葉大学大学院 工学研究院 地球環境科学専攻 教授
村木 美貴様

一般社団法人Japan Innovation Network 代表理事
西口 尚宏様

■ 幹事会員
株式会社三菱総合研究所 常務執行役員(現・専務執行役員)
長澤 光太郎様

大日本印刷株式会社 専務執行役員
北島 元治様

コクヨ株式会社ファニチャー事業本部 副事業本部長
笹野 芳英様

株式会社日建設計 取締役 常務執行役員 都市部門統括(現・代表取締役社長)
大松 敦氏様

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 / 株式会社T-SITE 代表取締役社長 兼 開発本部本部長
天川 清二様

東急株式会社 取締役社長
髙橋 和夫様

東急株式会社 取締役 常務執行役員
髙橋 俊之様

株式会社三菱総合研究所 執行役員 営業本部長
中村 秀治様

■ ゲスト
日本電気株式会社 取締役 執行役員副社長
石黒 憲彦様

■ 司会進行
株式会社三菱総合研究所 執行役員 営業本部長
中村 秀治様

基調講演
「コロナ禍からの脱出」
のための知の構造化

株式会社三菱総合研究所 理事長
小宮山 宏氏

人類史の転換期 〜新型コロナに関する知の構造化〜

私は、アフターコロナは、プラチナ社会に向けてますます加速していくのではないかと思っています。日本はずっと中央集権的なやり方をしてきました。しかしコロナを契機として、自律分散協調系の社会に向かっていくだろうと思うのです。

コロナは、感染者数と死亡者数でみると、第一波は、圧倒的にヨーロッパと北米の問題でした。ところが致死率で見ると、国によって大変大きな違いがありました。ヨーロッパのフランス、スウェーデン、イタリア、スペイン、ベルギー、このあたりの致死率は15〜16%でした。6人に1人が死んでいるということは、これはもはや医療や社会の崩壊です。でもたとえばシンガポールは、感染者数は多いのに致死率は低くて0.07%でした。台湾は感染者数自体が少なかったですね。つまり、こういった国では、医療崩壊が起きませんでした。

第二波はどうでしょうか。やはり、ベルギーやフランス、南米などは非常に大変でした。ただし、致死率は第一波のときと比べてかなり低く、数%まで下がっています。この理由ははっきりとはわからないけれど、ひとつはやはり、医療崩壊や社会崩壊が起きていないこと。そしてワクチンはまだですが、医療自体が第一波のときより進化したということなのだと思います。

日本も同じです。最初のころは、致死率5%といわれていましたが、今は1%程度まで落ちています。それに、これまでのデータを見ていても、死亡者の90%以上が60歳以上。現役世代はほとんど死なず、70代以上でも9人に1人程度です。

これらのデータからわかるのは、コロナは確かに舐めてはいけないけれども、今は過度に怖がっているのではないかということです。ここのところ、自殺が増えていますよね。自殺はもっとも極端な結末ですから、その裏でDVや鬱はもっと増えている可能性があります。つまりこのままでは、コロナで死ななければいい、という話にもなりかねません。私は、必要以上に怖がりすぎず、もう少し社会を開かないといけないのではないかと思います。

そうした中でも希望があるのは、自治体独自の動きです。たとえば世田谷モデル「いつでも、どこでも、何度でも」もそうですよね。和歌山県は、日本で初めて医療クラスターが発生したけれども、濃厚接触者の調査などを徹底的に行い、その後はうまく抑え込んでいます。

そもそも、地域によってさまざまな違いがあるので、国が同じルールで統一しようとしても難しいところがあるのです。ですから、それぞれの地域が、それぞれの地域の特徴を踏まえ、自ら判断していく。その上で、県や国が協調を取っていくようになる必要があるのだと思います。

With and after corona
〜ハイブリッド、休養も大切 コロナを奇貨として未来へ向かおう〜

ここがコロナからの学びだと思っているのですが、そうするとやはり、今後は自律分散協調系へ向かうということだと思うのですね。

先日、南町田グランベリーパークを拝見してきました。南町田は、プラチナ大賞で「新しい時代のまちづくり賞」を受賞したそうですね。本当にすばらしいまちで、これも自律分散協調系のひとつだと考えることもできると思います。

今は特殊な転換点にあります。産業革命は18世紀に始まっていますが、そこから今までで、一人当たりのGDPは7〜8倍になりました。人口は5倍。そのうえ長生きするようになったから、その影響が地球を変えるくらいに大きなものになってきている。

こうした課題を踏まえて、プラチナ社会というのは、地球が持続し、豊かで、人の自己実現を可能にする社会だと定義しています。プラチナ社会の必要条件は、エコロジーであり、資源の心配がないこと、あるいは参加型社会であることなどです。

昔は、みんな「物」が欲しかったから、高度経済成長が成り立ったわけです。でも今欲しいのは、もう「物」じゃないのです。エコロジーや資源、参加型であることや雇用や自由があることなどを求めています。ですからその周辺にビジネスチャンスはあるはずで、そこから前に進むべきだと思います。

こうしたことを進めるには、NPOなどの存在は極めて重要です。しかし、やはりスピードには欠けるところがあります。今のスピードのままだと、さまざまな課題解決に間に合わない。だからやはり資本主義でビジネスをつくり、スピードを上げていこうというのが僕らの提案です。

「自給国家」という極めて合理的なモデルがあります。

今、海外から輸入しているものは、よくよく考えれば、国内のGDPになりえるものです。日本のGDPが500兆円ですから、たとえば輸入していたものを国内で生産し、それで50兆円増えたとすると、全体の10%にもなるわけです。これが、地方創成の確実な原資になる。たとえば再生可能エネルギーなどは、ほとんどが地方に生まれるビジネスですよね。

僕らが最近力を入れているのは「近代林業をつくること」です。そうすると国土の3分の2が山林の日本は、材木の輸出国にもなれます。しかしまずは自給です。今、材木の自給率は約30%。これをさらに自給していこうと、私自身も「会津森林活用機構」という株式会社をつくって、少しずつ動いています。

3時間耐火の認証が、木材でも昨年あたりからおりるようになり、10階建ての純木造ビルが、この1年間でおそらく10棟ぐらいは建つことになりそうです。バイオマスは、もちろんエネルギーとして使ってもいいのだけれども、僕はプラスチックのあとの材料に代わってくるのではないかなということも期待しています。科学者たちが必死で研究していますからね。これからは「近代林業×木造都市×バイオマス」で、日本の森林を再生させて、森林文化をつくっていきたいです。

もうひとつ、可能性を感じるのは「健康」ですね。腰痛やアトピー、認知症など、新しい生活習慣病については、ビックデータがあれば、そのまわりに膨大な健康産業が生まれることは間違いありません。

今、世界でもっともクオリティの高い健康に関するデータは、じつは青森の弘前大学にあります。弘前大学では、15年間、毎年1000人から3000項目のデータを取っているのです。これによって何ができるのかというと、ある健康状態の人が、糖尿病などの生活習慣病を何年後に発症するのかということが極めて高い確率で予測できるのです。それから、京都府立医大や沖縄の名桜大学、さらにはベトナムまで、アジア人の健康データをビックデータにし、健康産業のプラットフォームを日本でつくりたいという動きがあります。

今回のコロナは非常に大きなイシューですが、私は前向きに「プラチナ社会実現へ加速せよ!」というメッセージだと受け止めています。そのためにも自給国家を目指し、健康や一次産業、再生可能エネルギー、観光や教育、そのためのインフラといったプラチナ産業をどんどん前へ進めていかなければなりません。そして、未来の社会を意識し、課題を解決していこうというプラチナスピリットをもって起業する人材を育てていかなければなりません。

私はいつも申し上げていますが、とにかく今よりもっといい社会というのは必ずつくれるはずで、未来に希望は必ずあると思います。

沿線概況報告
コロナ×都市
〜東急沿線の状況 当社の取り組み〜

東急株式会社 沿線開発事業部長
西村 隆徳氏

コロナ禍における東急沿線の状況ですが、もっとも顕著なものとして「巣篭もり需要」や「鉄道の輸送減」といった劇的なニーズの変化が、また、働くという点で「リモートワークの定着」が挙げられると思います。

鉄道事業につきましては、2020年3月以降、輸送人員の減少が顕著です。これは、コロナ禍における「仕事/学業のための移動の減少と分散化」による影響が大きいと思われます。小売事業ですが、東急百貨店は鉄道事業と同様に3月から売上が大幅に落ちていますが、店舗ごとに違いもあります。渋谷本店のような都市部の店舗と比べ、たまプラーザのような郊外型店舗は落ち込みが小さく、戻りも早くなっています。一方、東急ストアは対照的に、3月以降、前年度より売上増の傾向が続いています。

これらの傾向から見えてくるのは、東急沿線生活者の行動範囲や購買行動は、より住まいの周辺となり、足元での行動が活発になっているということです。

これらを踏まえて、弊社でも今後の都市の在り方を検討しています。ひとことで言えば、小宮山先生も仰っていたように、自律分散協調系の都市構造に変えていきたいと考えています。

東急では2018年に中期経営計画を発表しました。今後は郊外から都心に向かう通勤モデルから脱却し、沿線内に自律的な経済圏をいくつも形成する。そして、各々の経済圏ユニットが協調し、発展していく、そんな都市構造を目指していきたいと思っています。それぞれの圏内に、職・住・遊の要素を折り込み、文字どおり自律した経済圏を形成するとともに、それぞれの経済圏ユニットは独自の特徴を持ち、役割分担することで協調していくイメージです。

この仮説を裏付ける兆候は、東急沿線内でも見られています。

4年前から参入している弊社のシェアオフィス事業「NewWork」には、コロナ前にも増して、引き合いが非常に強くなっています。

商業施設では、生活圏に近い郊外ほど、売上は回復の傾向です。南町田グランベリーパークは、コロナ前の売上水準にほぼ戻りつつありますし、田園都市線の青葉台東急スクエアは、対前年度を上回っている月もあるほどです。また、弊社で行っているたまプラーザでのコミュニティ活動では、現役世代の参加が増えており、地域に目を向ける人が増えているとも言えます。

以上のように「郊外の再評価」ともいうべき変化がおきており、東京都市圏において郊外の果たすべき役割というものがさらに増していくのではなかろうかと考えております。

自律的な経済圏への取り組み

たまプラーザでの郊外型MaaS

① 郊外型MaaS

2019年、たまプラーザにて、パーソナルモビリティとオンデマンド交通、さらにハイグレード通勤バスという形での郊外型 MaaSの実証実験を行いました。2020年4月からは二子玉川において、世田谷区が手がけるシェアサイクル実証実験にも協力しています。

② 公民連携

2012年から、横浜市と共にたまプラーザを舞台にした「次世代郊外まちづくり」を推進しています。長年にわたって地域のみなさまと交流を重ね、さまざまな地域活動に取り組んできました。近年では、郊外住宅地での新たな就労の在り方や働き方について、地域の方々と一緒に検討しているところです。

2019年には大田区とも公民連携基本協定を提携しました。池上駅周辺をモデル地区とし、空き家などの遊休資産活用の推進を行っています。地域の方々の主体的な地域活性化への取り組みを積極的に支援しています。

フリーディスカッション
コロナ禍における、
都市と郊外の在り方

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
株式会社 T-SITE 代表取締役社長 兼 開発本部 本部長
天川 清二氏

新型コロナウイルスは、健康や経済活動のみならず、職住遊学といった行動様式を一変させ、都市構造の在り方も大きく変えようとしています。どのような変化を求められ、どのような可能性を見出せるのか。本年の円卓会議は「コロナ×都市」をテーマに、コロナ禍における状況や、都市と郊外の在り方、今後の可能性について議論いただきました。

安全という価値観を満たしつつ、
個人が自由を実現するために判断し行動する変化を感じる

商業施設「T-SITE」は、関東のほか、大阪や広島などに全部で5店舗ございます。議論の前段として、現在の状況をお話してほしいということでしたので、簡単にまとめてきました。

結論から申し上げますと、湘南T-SITEや柏の葉T-SITEなど、郊外の店舗は巣篭もり需要やトラフィック、生活環境の変化を踏まえて、昨年と比較しても非常に多くの顧客に利用して頂けるまでになっており、これは単に売上の良し悪しという話ではなく、消費動向の変化だと感じています。

都心と郊外の間といっていいと思いますが、二子玉川ライズの一角に出店させていただいている蔦屋家電も、郊外の店舗まではいきませんが、多くの顧客に利用して頂けるようになっております。

そして都心にある代官山T-SITEは、郊外、二子玉川蔦屋家電などと比べると顧客の戻りはやや遅いという状況ですが、都心の他商業施設などと比較すると戻りは早く、通常の風景を取り戻してきていると感じます。逆にいえば、ソーシャルディスタンスや3密を避けることがきちっと守られている中で、都心においてもこういう状況はつくられ始めているわけです。

コロナによって、誰もがこれまでの考え方や自分の行動を必然的に変えざるを得ない環境におかれました。これはもちろん、消費行動にも影響があります。そこで、緊急事態宣言直後、お客さんの変化が施設や実空間にどのような影響を与えたのか、さらに、これらの変化が直近ではどうなっているのか、T-SITEを通じ感じたことを整理してみました。

コロナ前コロナ初期現在
価値観 自由 安全 両立
施設・実空間 集客集合 在宅、時差分散 目的に応じて
判断する
消費・行動 接触 非接触
(通販・宅配・リモート)
参加・体験・共感
顧客 訪問者中心
(不特定)
会員中心
(特定)
自分が参加したい
コミュニティ
主体者 企業 個人 個人の意思・責任
東京都市大学 学長
三木 千壽氏

アフターコロナでは、
どのような形で新しい教育を定着させるか

コロナによって、大学教育は大きな変革期がきたと思っています。東京都市大学も、2月ごろからオンライン授業の導入の検討を始め、すべての授業をオンラインに切り替えると決定したのは4月上旬のことでした。新学期の開始を1か月半ほど遅らせて準備を行いましたが、バタバタでのスタートです。第1クォーターはなんとか乗り切り、第2クォーターになってようやくオンライン授業が落ち着いてきました。

ところが、学生や保護者から意見を聞いているうちに、これはダメだと思い始めました。特に、保護者の意見には考えさせられました。子どもが1日中、部屋から出てこないとのことです。授業を受けるために、朝から夕方まで、部屋でずっとパソコンを覗き込んでいる。これでは子どもがおかしくなりますよという意見が、まず、耳に入ってきました。宿題の量も半端ではない。しかし、本もなければ図書館も使えない、どうすればいいのか、ということです。

また、オンライン授業では、回線のキャパシティのため、学生はカメラも音声も消していることも多い。そうすると、一度ログインしておけば出席ということになって、いくらでもサボれてしまうのです。もっといえば、試験方法も難しい。パソコンのほかにもう1台スマホがあれば、いくらでも裏で調べることができる。本学はコピペを検知するソフトを導入し対策はしていますが、ひょっとしたらこのままでは教育にならない可能性があると感じました。

実は今日、世田谷区にある10大学の学長懇談会がありました。オンラインによって教育効果が上がったとおっしゃる学長も多くいらっしゃいました。確かに、全員の成績を全科目チェックしたら、これまでと分布が変わって可と不可が極端に減り、優に移行していました。しかし、これをどう考えるか? 私には教育効果が上がっているようには思えませんでした。

学生の教育は、後送りができません。この時間、この時代は今しかないわけで、ロスしたら2度と戻ることはできない。私は、1970年に大学を卒業していますが、その頃は大学闘争があり、私は3年生の後期後半から4年の前期をロスしているのです。やはり、その後遺症はあるわけです。自嘲を込めて我々はロストジェネレーションというのですが、気をつけておかないと、今の学生たちが現代のロストジェネレーションになりますよということを申し上げたいと思います。

その対応策として、本学では、第3クォーターから全面的に対面授業に戻しました。ただし、自分やご家族に重大な疾患があるなど、対面授業ができない場合には、許可制でオンラインでの受講も可能です。現状は、8割ぐらいは対面でやっていると思います。

もちろん、対面授業に戻したといっても、オンラインと組み合わせたハイブリッド形式、ブレンディング形式で、オンラインと対面の両方の良さは取り入れています。たとえば、対面授業を受けに教室に来ている学生にも全員にパソコンを持たせています。そうすると、オンライン授業の良さも活用できるわけです。質問はチャット機能を使えばオンラインのほうがしやすいですね。それから、授業を全部録画して学生が何度でも見返せるようにしています。しかし、ライブと録画には大きな差があることに注意です。

アフターコロナの教育というのは、オンラインだけでなく、ライブの部分をどううまく使っていくのかが大切になってくるのではないでしょうか。そのような意味では、教育のスタイルが変わってくるのだろうと思います。

ウィズコロナの現時点でも日々格闘していて、今の学生たちがロストジェネレーションにならないように気をつけなければならない。そしてアフターコロナでは、どのような形で新しい教育を定着させるかが重要な課題になってくると思っています。

一般社団法人
Japan Innovation Network 代表理事
西口 尚宏氏

個人が動き回って
いろいろなことをやってみることが大切

私は、大きな組織からイノベーションを起こすことにこだわって仕事をしています。そうした大きな企業とお付き合いをさせていただいている中で、今、強く感じているのが、企業に属しながらも、個人として動き始めている人の数が圧倒的に増えているということです。

例えば、国内外含めて個人が主催するウェビナー、コンファレンスなどが、たった1、2週間の準備で毎日のように開催され、あっという間に数百人単位が集まっていることなどは、コロナを通して起こった大きな変化ではないかと思います。

こうしたウェビナーは、スピーカーが個人名で、かつ魅力的でないと成立しません。つまり、ある意味で個の力が今まで以上に際立つことになります。それは時として残酷な結果をもたらすかもしれません。しかし現実に、そんな時代になりつつあります。

プラチナ社会と掛け算して考えると、個人が輝ける時代ですし、輝き方も人それぞれということがいえると思います。旧来型の「会社で出世して偉くなりました」という輝き方だけではない、まったく違う輝き方があることに多くの人がすでに気がついていると思います。

年齢も老若男女も関係なく、個人が輝き、動き回っているというのが、コロナ真っ最中の今の日本の姿です。もちろんコロナによって、飲食業、旅行業、航空業など、業種によってはかなり大変なことになっていますし、さまざまな問題はあります。

しかし、だからといって縮こまっているのではなく、個人が動き回っていろいろなことをやってみることが大切ではないでしょうか。当然、失敗することもあると思います。でも、諦めずにトライし続ける。そして、困難な中でもやり続けることが大事なのだと、円卓会議のようなコミュニティが推奨し、勇気づけていく。これこそが、今、我々が世に発信すべき重要なメッセージなのではないかと感じました。

NPO 法人 CANVAS 理事長
慶應義塾大学 教授
石戸 奈々子氏

蜜ではないけれども集積し、
つながることができるような
プラットフォームをどのように構築していくか

最近は、ひたすらオンラインで活動をしています。ミーティングも授業も入試もオンライン。シンポジウムや子ども向けのワークショップ、イベントなどもすべてオンラインです。いったいどれだけのことをオンラインでこなしているのかと思うほどの生活です。

でも、オンラインだけでこと足りているのかというと、そうでもありません。結局のところ、どこかでライブの熱気を求めていますし、学生からも、対面の授業や直接の対話が欲しいという声が上がっています。

私たちは、新しいセレンディピティを求めて街に出ます。物理的に出会い、五感でコミュニケーションすることを本能が求めているのでしょう。現在の技術では、対面のコミュニケーションを超えきれない技術の未熟さがあるのかもしれませんが、今後の発展に期待します。

ICTはいつでもどこでも活動できる「分散」を可能にする技術です。その一方で、ICTの進展により、さらに都市集中が加速したというのがこれまでの歴史でした。都市の役割は密にすることであったと思います。密になることで新しい出会いやセレンディピティという価値を人間に提供してきました。街はこれまでも幾度となく災害などに見舞われつつも、インフラを強化し、再度集積してきました。しかし、コロナは密になることを許しません。

私はスマートシティづくりにも関わっていますが、コロナ前から議論していたのは、技術やコンテンツをいかに「集積」させるかということでした。でもそこで考えていたのは、実は「密ではない集積」だったんです。この場合の「街」には、分散しているいろいろな業界を結び付けてくれるハブの役割があります。そういう意味では、このスマートシティの議論はアフターコロナにも適用できるものじゃないかと思っていますので、そのまま進めています。

教育も同じです。ひとつのキャンパスに集まったり、ひとつの組織に帰属することではなく、必要なものがつながっていくことが大切です。密ではないけれども集積し、つながることができるようなプラットフォームをどのように構築していくかを考えることがとても重要で、それは、教育だけでなく、まちづくりにも適用できるものだと思います。

ランドスケープアーキテクト
東京都市大学 環境学部 特別教授
涌井 史郎氏

コミュニティの価値をもう一度、
どう確率するか

私が皆さんのお話を聞いていて頭の中に浮かんできたのは、リアルとバーチャルをどのように整理するべきなのかということです。ヒトの脳内でも、情動という動物的な本能と、理性や知識を担う大脳新皮質、そしてその双方から解を見出す前頭葉が最終の判断を下すと言われています。要はバランスです。じつは都市の姿も同じなのではないでしょうか。

COVID-19後の都市像のイメージは、柔らかな都市構造や産業構造です。今までのように生産=経済を目指してきた剛構造の都市を、どうやって柔構造の構造体に変えるのかということです。

そのような視点から、政策に登場してきたのが、来年度からスタートする社会資本整備重点計画の目玉になる「グリーンインフラ」です。改めて、日本の国土の中に潜在的な資源として賦存する豊かな自然を「財」つまり資本財として評価する。その上で社会資本と自然資本のバランスをとる。これまでにない組み合わせの発想です。この発想は、これからの都市、いや都市のみならず国土のマネージメントに大きな影響を与えることと思います。

パトリシズム(愛郷主義)に聞こえるかもしれませんが、グリーンインフラつまり自然共生の在りようを考え、我々が立ち返るべきところを考えると、自ずと日本の江戸時代に行きつきます。江戸時代は、鎖国と藩の自立を基本とした閉鎖系の社会だったので、自律分散型の社会構造を考えたコロナ後の社会のよきモデルになると思えてなりません。

自律分散型を強いられていたからこそ、自然を資本財として考え、特産物などを発掘することに極めて巧みであったし、再生循環と自然共生のキーワードを抜きにして、経済は成り立たなかったわけです。こうした江戸時代の社会のあり方について、今一度、掘り起こしてみる必要があると思います。

しかしその江戸時代を考える上で、改めて見ておくべきことが社会構造の中にあります。それは「公・共・私」の関係です。強大な公権力に対し、私権が可能な限り脅かされないよう庶民は匿名性のある「共」、つまり相互扶助の濃密な助け合いのコミュニティをつくらざるを得ませんでした。それは戦前まで続きます。しかし戦後民主主義は公に共を取り込んで「公共」という概念をつくり上げてしまいました。いわゆるタックスペイヤーとイーターの関係です。その結果人々はコミュニティに関わるすべての事柄に関わる自分の責務を放棄してしまいました。自分たちの暮らしの空間の熟成や快適さは公に依存するだけでなく、コミュニティの問題でもあるという意識をどのように再構築すべきなのかが問われています。とりわけグリーンインフラという仕掛けはその維持管理にコミュニティの力が必要であるからです。

さて、冗談のように聞こえるかもしれませんが、私が皆さんにお勧めしたいのは「ブラタモリ」と「釣りバカ日誌」です(笑)。

「ブラタモリ」という番組は、実は私が提案し てできた番組です。私たちは近隣に価値があることを忘れてしまっています。けれども、ただブラブラしているだけで、こんなところにこんなものがあったのかという発見があり、楽しさがあり、近隣に対する愛着を見い出せるようになるんですね。すなわち、「ブラタモリ(ブラブラすること)」は、コミュニティの基盤である地域の価値を再確認する番組です。いわばマイクロ・ツーリズムそのものです。

次に、なぜ「釣りバカ日誌」なのかというと、ふたりの主人公のひとり、経済的に成功した「スーさん」こそ、我々が目指した昔の幸福のモデルだったと思うんです。「幸福=物的充足度/物的要求」で、欲しいものがなんでも買える財力を獲得することが究極の幸福像でした。しかしふと考えてみると幸福の実感がない。それに気づいた。

そのスーさんの会社に働く下っ端の「ハマちゃん」は、魚釣りという趣味を楽しみいつも笑って楽しそうに暮らしている。ハマちゃんのライフスタイルは「幸福=時間充足度/自己実現欲求」です。つまり自分らしく生きていくことに、人生の時間をより多く割いている。スーさんにしてみれば過去の自分を顧みて余程ハマちゃんのほうが幸せだという価値観です。COVID-19後の社会は、これまでの豊かさを追い求める社会ではなく、豊かさを深める社会の方向に大きく舵が切られ、デジタルで時間を見出し、自然共生と再生循環をキーワードにしながら新たな文明、それこそEUが提唱する持続的未来のための「グリーン・リカバリー」を実現した幸福像の実現を目指す方向に大きく変容しようとするのではないでしょうか。まさにCOVID-19禍で期しくも行動変容の集積が、社会的大変容「トランスフォーマティブ・チェンジ」を生み出す気がいたします。

コクヨ株式会社
ファニチャー事業本部 副事業本部長
笹野 芳英氏

これからのワークプレイスの
あるべき姿を見いだしていきたい

私はコクヨで、企業のオフィスの構築に携わっております。日々、多くの企業と関わりをもたせていただいておりますので、そういったところで感じていることをお話させていただきたいと思います。

コロナ禍を受けて、まず、企業の働き方改革が大きく進展したと感じています。ワークスタイルが変わるとワークプレイスが変わり、ワークプレイスが変わると、ビルの在り方が変わり、最終的には都市の構造が変わっていきます。

まず、ワークスタイルとしては「アクティビティ・ベースド・ワーキング」が一気に広がりました。これは、ワーカー自身が、時間と場所を自由に選択する働き方のことです。今回、在宅勤務に後ろ向きだった企業も、強制的にリモートワークに移行せざるを得なくなりました。そうした企業の方々にお伺いしますと、多くの方が、たとえコロナの脅威がおさまったとしても、元の働き方には戻らないだろうと考えていらっしゃいます。

一方で、ガラガラになったオフィスを見て、このままで企業の競争力を保っていけるのか、新しいビジネスをつくっていけるのだろうかという不安があるという話もよく耳にします。

このような状況を受けて、ワークプレイスの在り方は当然、変わっていくものだと感じています。具体的には、チームで働き、ともに学び、帰属意識を高めていくといった内容の仕事は、従来どおり、都心のセンターオフィスで行われ、個人で完結できるワークについては、自宅やカフェ、サテライトオフィスなどで行われていくことになるでしょう。結果、都心のオフィスの床面積が縮小傾向になることは、間違いないと思います。

今後は、センターオフィス以外にも多種多様な働き方が整備され、個性あるまちづくりや職住近接がどんどん進んでいく、そんなイメージがあります。AIやビックデータが活用され、地域が自立して内需外需を回し、都心に頼らないコンパクトシティがあちこちに形成されていくでしょう。

コクヨは今、さまざまな企業のワークスタイルを徹底的に研究しようとしています。これからのワークプレイスのあるべき姿を見いだしていきたいと思っておりますので、こういった領域で何かございましたら、ぜひ、お声掛けいただけたらと思います。

大日本印刷株式会社 専務執行役員
北島 元治氏

オンラインとリアルをあわせた
ハイブリッドなコミュニケーションの在り方を
社会全体で模索していきたい

当社はこれから非常に厳しくなるであろう製造業のいろいろな分野で仕事をさせていただいております。製造に、情報加工という意味でのITテクノロジーの組み合わせを用いてどう事業をつくっていこうかとビジョンを検討し、これからの会社の在り方についてずっと議論を続けてきました。

今回、コロナが起こったことで、たとえばネットワーク教育やヘルスケアの分野では、ものすごく加速した部分と減速した部分があります。減速した部分については回復するものもあるかと思いますが、コロナ禍が2、3年続いた場合には、市場そのものがなくなってしまったり、まったく違う分野に置き換わってしまうのではないかと思っています。それをどのように予測して対応していかなくてはならないのかについて、今、とても悩んでいます。当社は、オンラインに移行可能な仕事のほか、工場がたくさんあります。工場のみなさんには、あの苦しい環境下に出勤していただき、生活必需品に近い分野の製造を続けておりました。

事務職については、問題なくオンラインに移行可能でした。一方で、新しいタスクを生み出したり、クリエイティブな分野の仕事をオンラインでやることは非常に難しい部分があったように感じています。ここをどうクリアしていくのかはこれからの課題で、今後は、オンラインだけではないリアルな部分と、オンラインを含めたハイブリッドなコミュニケーションの在り方を、社会全体で模索をしていくことができればと思っています。

超低反射フェイスシールド(左)と従来品(右)

会社としてはリアルの必要性を再認識しているところですが、オンラインにも良いところがあります。いろいろな社員がオンライン上で自由活発な意見交換をした末にできた製品が、今お配りしたフェイスシールドです。

じつはフェイスシールドの両面には反射防止処理がしてあり、ほとんど無反射なんです。社員のひとりから、テレビなどで手話通訳の方が情報を伝えていても、フェイスシールドが反射すると表情が見えず、実際に聾唖の方々が困られているという話が出たんですね。

また、社内工場でも、通常のフェイスシールドを装着してパソコンをずっと見ていると、反射することで非常に辛いという意見がありました。

当社には、世界的にも非常に高い評価をいただいている、液晶ディスプレイ用の反射防止フィルムがありました。これらについてオンライン上で議論して商品化出来たのです。

これ自体が大きな商売になるとは思っていません。けれども、こういったアイデアや各企業さんが持たれている世界的な強みを活かした新しいコミュニケーションに貢献することで、日本の強みをますます生み出していけるのではないかと期待しています。クリエイティビティが活かせるコミュニケーションの在り方を、企業として、もちろん社外の方々との協調も含めて生み出せていけたらと思っております。

株式会社日建設計 取締役 常務執行役員
都市部門統括(現・代表取締役社長)
大松 敦氏

都市の動的な変化がどのような状況で
平衡するかが重要なポイント

私たちは、都市づくりや建築設計を中心に仕事をさせていただいておりますので、都市がどう変わっていくのかということに、非常に関心を持っています。

日頃から特に都心の仕事をしていると、都市は、鉄道や高速道路、ビルなどの大規模な構造物に支えられた静的なシステムのように思いがちです。しかし今回のコロナのように激しい変化があると、実は都市は動的なシステムなのだと思い知らされます。

コロナによって人の動きが大きく変わってきていることは、皆さまもお話されているとおりです。同時に、住まい方も大きく変わってきています。たとえば私の職場に、家族と一緒に神楽坂に住んでいる人がいるのですが、コロナで週1回しか会社に来る必要がなくなったため、鎌倉に単身用のアパートを借りたそうなんです。普段は鎌倉のアパートで在宅勤務をし、空き時間にいろいろ楽しむ。会社に出社するときは、前日に神楽坂の家に帰ってそこから出勤する。

故郷の両親が心配なので、2 ヶ月ほど遠方から仕事をさせてもらえないかという申し出もありました。そんなことも現実にできる時代になってきたんですね。

これからは、都市の動的な変化がどういう状況で平衡するかが重要なポイントになってくると思います。その中で、それぞれの都市がかなりフレキシブルに結びついていくことが大事になってくるのではないでしょうか。

建物の用途などもそうなんですが、今は何かを変えたいと思っても、なかなか簡単には変えられない状況です。なぜなら、技術的なことのソリューションも必要なのですが、それ以前に、日本の法体系が簡単に変えられるものではないからです。このように、社会制度自体が動的なものになれないという現状があります。そのあたりも合わせて、これから変えていくことにチャレンジしていきたいと思っています。

千葉大学大学院 工学研究院
地球環境科学専攻 教授
村木 美貴氏

スマートシティというのはあくまで手段。
目標・目的が何なのか

コロナ後の都市という観点で思ったことをお話しします。

まずコロナによって、対面の重要性がすごく認識されたと思います。そしてもうひとつ「毎日オフィスに行かなくてもよいなら、どこに住んでも構わない」ということも認識されたのではないでしょうか。

以前、サンフランシスコから帰ってくるときに飛行機で隣になった人が、サンフランシスコは住宅価格が高すぎるので遠くに住み、飛行機で2週間に一度オフィスに通っているという話をしていました。そういう暮らし方が日本でも取り上げられるようになると、郊外型の暮らしがよい人は、別に首都圏に住まなくてもよくなります。私は、首都圏の働き手が地方に住み、2週間に一度東京にくるといった働き方が、もっとあっていいと思います。

もちろん、そういう暮らしを選ばず、首都圏で生活する人もいると思います。しかし今回のコロナ騒動でわかったのが、首都圏の住宅形態を考えると、親が仕事で使える部屋がないということなんですね。リモートワークになって、家に書斎がなくて困っている人がたくさんいます。

この問題をクリアにするためには、新しい住宅を供給する際にきちんと書斎を用意すること、郊外にスモールオフィスをつくることなどを考える必要が出てきます。住宅ストックの利活用なども考えると、書斎は誰もが自宅につくれるものではありませんから、それに対応するための空室の利活用というのを、郊外も含めて、改めて検討していく必要があると思います。

もうひとつお話したいのは、飲食店の話です。今は「密を避ける」ということで、テーブル数が減っていますよね。季節のいい時期は野外での飲食なども考えられるわけですが、日本の場合は、道路空間や公共空間での飲食がしづらいという問題があります。そこでぜひ、今までできなかった規制緩和などを積極的に進めてほしいと思います。たとえば、公共空間で飲食をする際にはどこの店舗からでも好きなものを注文して決済が行えるというのはどうでしょうか。スマート化との関係でも、世界的に面白い都市ができるのではないかと思います。

最後に、スマートシティについてです。スマートシティというのはあくまで手段だと思っています。都市づくりにおける目標・目的が何なのかを考え、それにIoTをいかに役立てるのかを考えるべきです。

例えば、MaaSのプロジェクトを中心としてQoLの高い都市をつくろうと思ったときに、いったいどのような都市をつくって、その中でMaaSがどのような役割を果たすのか。そしてIoTがどのように機能するのかを複合的に考えていかないと、本当の意味でのスマートシティをつくるのはかなり難しいという気がしています。

一般社団法人俯瞰工学研究所 代表理事
松島 克守氏

今後は自粛するだけではなく、
前へ進むことも考えていかなければいけない

コロナが流行し始めて時間もだいぶ経ち、やっていいことといけないことが徐々に見えてきました。ですから、今後は自粛するだけではなく、前へ進むことも考えていかなければいけないと思います。私から話したいことは、3つほどあります。

まず、教育について。今はコロナコロナと言われ、すべて在宅で、誰もがポテンシャルを落としています。しかし、若い人にとっては特に、今、ポテンシャルを落としてしまうことは、人生の大幅なロスタイムになってしまうのではないかと危惧しています。

私は長年、東大で、知的腕力をつける授業をやっています。今年はこういう状況なので、4月からオンラインで授業をやりました。結論から言うと、オンライン授業だけでは、知的腕力はつきませんでした。例えばプレゼンテーションをやっても、みんな、資料をただ読んでしまうのですね。読むのではなく話すんだよと言っても、つい読んでしまう。知的腕力をつけるには、オンラインだけでは限界があると思いました。ですから、オンラインとリアルはもっとうまく使い分けなくてはいけません。そこは今後、ひとつ前に出ていって、新しいスタイルをつくっていかなくてはいけない部分だと感じています。

次に、働き方改革やリモートワークについてです。これからはリモートワークだと最近よく言われていますが、実際には、工場や病院、飲食店など、リモートできない職種のほうが圧倒的に多いわけですよね。だから、リモートワークやワーケーションの議論ばかりしていると、いずれしらけてしまうと思います。

今は、待遇改善なども含めて、在宅勤務ができない人たちに対しての議論がなさ過ぎます。働き方改革の議論をしている人たちは、リモートワークができちゃう職種の人たちばっかりなんですね。だから議論がそちらに向かっていかない。もっとセグメンタイズした議論をしていくように変えていくべきだと思います。

そして最後に、この先、日本がコロナで萎縮して、変に国内に閉じこもってしまうのが怖いです。これはコロナとは直接関係ありませんが、日本は今、成長力がなく、人口が増えていませんよね。高齢化も進んでいるし、内需はますます限定されていきます。ですから本来は、チャンスを求めてもっと海外に出て行くべきですね。ここで閉じこもってしまうと、日本はダメになってしまう。そこはぜひ、コロナを機会に外に打って出るくらいの気持ちをもって、ブレイクスルーしてほしいものです。

日本電気株式会社
取締役 執行役員副社長
石黒 憲彦氏

企業として多様な自己実現欲求と
全体最適の調和の両立を目指したい

NECでは、2020年のオリンピックが実行される前提で、ここを乗り切るためにリモートワークの環境をしっかり整えないといけないだろうと、2019年の後半からICT基盤を整えていました。そして2020年2月11日を全社一斉のテレワークデーとし、6万人の一斉テレワークを実行しようと計画していたところでした。ところがちょうどそのあたりから、コロナで自宅待機の状態になりました。結果としてBCP対策はよくできていたというのが実情です。

強制的に社内DXも進み、ある意味で、これで充分仕事はできると実感しております。ですから、将来の働き方としては、プロジェクト単位で仕事をするようになるのではないかと考えています。じゃあ、会社っていったい何なんだろう? ということも、今回の経験から考えるようになりました。

一方で、すべてをオンラインでやっていると、リアルなコミュニケーションやリアルな気づき、あるいはイノベーションするためのなにげない会話などがなくなってしまうんですよね。リアルの希少性やプレシャスな感覚の重要性はつくづく痛感しております。そういう意味で、我々が5Gや8Kを使いながら、もっとリアルな環境を実現できないか、ということは、今後考えていきたいところです。

ひとつコメントしたいのは、ビジネスとしてのスマートシティについてです。村木先生もおっしゃっていましたが、スマートシティ関連のまちづくり事業をやっている立場から見ていますと、まちづくりのコンセプトがはっきりしないスマートコミュニティやスマートシティというのは、実は結構あるんですね。イメージがないまま、漠然と「スマートシティをつくってくれ」と言われるとなかなか大変で、そういった場合は予算がなくなると同時に終了してしまうことも多いんです。

今後、スマートシティが本当の意味でのスマートシティとして成立していくためには、首長にしっかりとしたビジョンがあることや、市民が自ら関われるような、市民参加型のまちづくりをすることが大切ではないかと思います。ですから個人的には、企業として多様な自己実現欲求と全体最適の調和の両立を目指したいです。サーキュラーエコノミーが達成でき、かつ、自己実現欲求を満たしてあげられるようなまちづくりをしていきたいと思っています。

東急株式会社 取締役 常務執行役員
髙橋 俊之氏

ピンチをチャンスに変え、
ポジティブにいいまちづくりを続けていきたい

都市開発を担当しているものとして、皆さまの話を聞けば聞くほど、我々、東急のまちづくりに対する考え方、そして取り組みは間違っていなかったと強く確信しています。

40年前、我々にとってまちづくりは主に、いわゆる舞台づくりや装置づくりでした。まちに住んでいる人がいかに楽しく生活するか。舞台でいえば、踊る人がいかに踊りやすく、楽しく踊ってもらえるのかを考えるのが我々の仕事だと、先輩方がよく話していたのを思い出します。この姿勢は、今でも変わっておりません。

西口さんから、組織から個人へという話がありましたが、まちの中でも、もっと個人の立ち位置が見えて、活動が活発になっていくべきだと思います。私たちも、10年程前から「次世代郊外まちづくり」ということで、横浜市や川崎市と手を組んで、地域住民が中心となるまちづくりを進めてきました。

そしてまた、都市と郊外の連携はとても大事だとも思っています。渋谷スクランブルスクエアと南町田グランベリーパークは、昨年、ほぼ同時に開業しました。スクランブルスクエアは日本でも有数の渋谷というまちにあり、我々も自信を持って開業できましたが、同時に開業する南町田が霞んでしまうのではないかという不安はありました。しかし、都市と郊外は両輪で、これからは連携していくことが大事なんだという強い信念をもち、イベントやシンポジウムを開催させていただくなどして、無事開業に漕ぎ着けました。

ふたを開けてみると、コロナになってむしろ郊外に目が向けられるようになり、南町田は大変に賑わいのある、とても良いまちに進化しています。ここはまだ未完成で、2次開発も3次開発も残っておりますので、今後はますますアフターコロナ、ウィズコロナにふさわしいまちになっていくと思います。

今、気になっているのは、都市部の空き家問題や生産緑地法改正に伴う諸問題です。沿線郊外でも、徒歩圏ではない場所は高齢化が進み、子どもたちが戻って来ず、空き家が増え始めました。しかしこれからは毎日会社に行かなくてもよくなるので、郊外に住み、普段は自然に近い場所で仕事をするという選択肢も生まれるのではないでしょうか。そのように考えると、我々にとっては、これはピンチではなく、実はさまざまなチャンスでもあります。

当社長期構想の中で「City as a Service」というキーワードを提唱しておりますが、住民や市場のマジョリティに対してサービスなどを提供する従来の考え方から、極端に言えば各個人の欲求や行動や思いに対して、ひとつずつ全部応えられるようなまちづくりが理想的だと思います。そのためにもデジタル都市基盤の確立は欠かせないでしょう。舞台づくりに加え、踊っている一人ひとりが楽しめるまちをつくっていくことが、我々の理想です。

まずは身近なところから手をつけていかなければということで、沿線拠点の整備などをすでに具体的に始めていますが、今回のコロナがむしろ良いきっかけになり、その動きがさらに加速化していくと思っています。ピンチをチャンスに変え、我々はポジティブに、これからも良いまちづくりを続けていきたいと思います。

株式会社三菱総合研究所 常務執行役員(現・専務執行役員)
長澤 光太郎氏

これからのクリエイティブ・シティは
スモールサイズのものが
厚みをもって出てくるのではないか

冒頭に三菱総研の仕事は全部リモートでできるのではないかという会話があったと記憶していますが、実際に4月7日の緊急事態宣言に先立つことひと月半前、2月半ばに、経営の決定で原則、在宅勤務を断行しました。かなり早い段階での決断だったと思います。

その時に、どうしても出社しなくてはいけない仕事はなんなのかについてかなり議論して、区分けをしました。すると、ほとんどは在宅でできる仕事だということがわかりました。

では、出社すべき人は誰なのか? 例えばセキュリティルールで、鍵がないと入れない部屋でしか資料が扱えないプロジェクトに携わっている人は、出社しなければなりません。ほかに、契約関係でハンコを使わなければいけないことがありました。郵便物も、メールボックスに入れっぱなしにしておくわけにはいかないので何日かに一度取りに来ないといけません。

こう並べてみると、多くの場合は、意外と重要ではないというか(笑)、つまらない理由で我々は出勤していたんだなというのが私の正直な感想でした。

私も、生まれて初めて、自宅で昼間に仕事をする生活をして、新しい発見がたくさんありました。その点は一沿線住民として語らせていただきます。

今は週2〜3日の出社なので、逆に言うと、週4〜5日は自宅中心に過ごしている状態です。そうなると、まずオフィス近くの行きつけのお店というものに行かなくなり、お金を使わなくなりました。それから、例えば妻とランチに行こうとなった時、自宅周辺のお店をほとんど知らないことに気がつきました。

1日2時間前後使っていた通勤時間がなくなり、その分を地元で過ごしているわけですから、仕事も効率化していると思いますし、空き時間に新しい店を見つけたり、近所を散策することもできるわけです。同じような方が、首都圏には数百万人単位でいるだろうと思います。そこで今後は、趣味などを通じて、何かクリエイティブなことを始める人たちが増えてくると思います。空き家などを借りてみんなで大きなスクリーンで映画を観たりしたら、その中から新しい活動が生まれたりもするかもしれません。

沿線開発には経済圏も大事ですが、沿線住民的に言わせてもらえば、文化圏や趣味嗜好で結ばれる共同体という概念もあったらいいと思います。

これまでのクリエイティブ・シティというのは、渋谷や二子玉川のように大規模でプロフェッショナルなイメージがありました。しかし今後はクリエイティブエリアやディストリクトなど、アマチュアの世界というか、かなりスモールサイズのものが、厚みを持って出てくるのではないかと思います。それによって、例えば宮崎台と武蔵小杉ではまったく違う地域文化が出てきたりしたら面白いだろうなと考えています。

コロナとの付き合い方の中でよりよい事業をどのように前に進めていくのか

東急株式会社 取締役社長
髙橋 和夫氏

今日はご参加いただき、ありがとうございます。私からは事業経営の視点で、話をさせていただきたいと思います。

ちょうど1年前は、渋谷のスクランブルスクエアと南町田のグランベリーパークが、我々のビックプロジェクトとして動いていました。そして2020年は、そこからさらに一段高いところへいけるようなものを計画しようとしていました。「この先、東急はどこにいくんだろう?」「どのように歩んでいくんだろう?」ということを率直に考え、内外に中長期の東急のあるべき姿を示そうということで、長期経営構想も発表しました。

2050年。つまり30年後に我々、東急のあるべき姿とはなんなのか? 「東急ならではの社会価値提供による"世界が憧れる街づくり"の実現」といったことを記し、メインのワードには「ウェルビーイングとソーシャルハーモニー」を掲げました。30年後も、やはりそこは外せないところだと思っております。

そして、サステナブルな経営を目指すということを軸に、手前の10年は、さまざまな施策をやっていくことを考えていました。利益だけでなく、ステークホルダーにプラスして地球環境の改善に取り組んでいく。そうしなれば、サステナブルな経営にはなっていかないだろうということを、去年の今ごろは考えていました。

しかし年が明けて、2、3月ごろにコロナがきたわけです。最初は、10月ごろには元に戻るのではないかという予測をしていました。とはいえ心配ですから、2 ヶ月ごとに各事業の状況を見ていました。

主力事業である百貨店は、インターネットの進化で業態を大きく見直す時期でもあり、ホテル事業は、コロナ前から外交関係の変化を受けやすいという経緯もありました。コロナでいちばん大変だったのは、鉄道事業ですね。

東急は定期券をお使いになっているお客さまの戻りが、私鉄各社の中でも遅れているんです。東急沿線は、テレワークで仕事ができる職業の方々や、そうした新しい働き方に積極的なイノベーティブな企業が多いので、そういうことが起きているんだと思います。

鉄道は固定費が高く、このままの売り上げだと常時赤字になってしまいます。そこで固定費の見直しに着手したり、さまざまな対策を行っているところです。困難な状況ではありますが、いかに来期以降、業績を回復させ、2019年の水準に戻していくか。ここが踏ん張りどころだということで、今、一生懸命やっております。

会社の働き方についても大きく変わりました。東急でも、いろいろな打ち合わせは現在オンラインでやっています。その面では、いわゆる生産性向上につながっています。

たとえば私のスケジュールは、これまでは15分おきにいろんなものが入っていたんですが、オンラインでやると、ひとつが5分くらいで終わることがあるんです。移動がないことで、私の生産性は確実に上がって、時間が空きました。そこで、その空いた時間を使い、いろいろな人とコミュニケーションをとるようにしています。

在宅勤務が80%近くになってくると、会社で、社員をあまり見なくなります。そういった場合のコミュニケーションロスというのは、会社としてダメージが大きいと感じています。それもあって、私もいろいろな会社の方々とオンラインで情報交換をしたり、社内でも、部門長を通して直接指示をしたりしています。これは時間が空いたからできたことで、コロナ禍の中で良かったことだと思います。今後、ウィズコロナになるのかアフターコロナになるのかわかりませんが、こうした良い点は継続しようと思っています。

そろそろコロナとの付き合い方が、私を含めてわかってきたところだと思います。その中でよりよい事業をどのように前に進めていくのかということも、考え始めているところです。

今日は、当然のこととはいえ、コロナの話が中心になりました。困っていることや社会問題を解決するためにはどうするのかなど、さまざまな意見をお伺いし、我々もいろいろな気づきをいただけました。本当にありがとうございました。

円卓会議からの示唆

働き方

IoTを活用することで、働き方は多種多様に変化し、職住近接や個性あるまちづくりが加速していく。リモートワーク化が進めば、それに対応した新しい家の形やワークプレイスも求められていくだろう。

教育

オンラインとリアル両方の良さを取り入れ、デメリットを補い合う、ハイブリッドで新しい教育スタイルが必要だ。それには、密ではないが集積し、つながることのできるプラットフォームの構築を考えることも重要だ。

まちづくり

スマートシティは目標・目的を定めなければ成立しない。また、柔らかな都市構造にはグリーンインフラが重要である。都市の動的な変化に対応するには、社会制度自体を動的なものに変える必要もあるだろう。

地域文化圏とコミュニティの再評価

地域では、コミュニティの価値が改めて評価されていく。また、経済圏だけでなく、文化圏も大切にすることで、これまでとは異なるスモールサイズのクリエイティブ・シティが数多く誕生していくだろう。

閉じこもらず、前へ

コロナによって個人が輝き、動き回るのが当たり前になった。委縮することなく、これを機にアクションを起こし、いろいろなことにチャレンジし続けることで、時代は変わっていくのではないだろうか。

メッセージ

コロナ禍における、都市と郊外の在り方を議論し発信していくことは、まさに、クリエイティブ・シティ・コンソーシアムが果たすべき役割だと考えます。人々が創造性を発揮できる舞台としての都市を創造するコンソーシアムの理念に基づいて、皆さまから幅広い、自由闊達な意見をいただきました。今後もクリエイティブ・シティの実現に向けた活動を実施していきたいと考えております。

クリエイティブ・シティ・コンソーシアム 代表幹事
小川 泰史