2012年度第1回オープンラボ
クリエイティブ・シティ・コンソーシアム
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まち塾・まちライブラリーコラボレーション企画
『いま私が節電するということはどういうことなのか?
~一人ひとりが発電所!?~』
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日 時:2012年6月5日(火)19時~
場 所:カタリストBA
参加者:約30名
条 件:参加者は「エネルギー」「節電」「省エネライフスタイル」等について
考えさせられる本を各自1冊持参のこと。
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ライブラリを前に(右:早稲田大学 友成先生)
カタリストBAライブラリ内のまちライブラリー:蔵書の数も増えて充実しつつあります。受付にて貸し出しも可能です。
今年度初のオープンラボは、昨年もコラボレーションした森記念文化財団の礒井純充氏が主宰する「まち塾・まちライブラリー」との共同企画です。
前回のお題は「クリエイティビティ」でしたが、今回は「節電」です。
おりしも日本の原子力発電所が一時的にせよ全て止まり、電力料金も値上げの動きが現実化し、また関西など一部地域では計画停電の噂まで飛び交う2012年の夏。節電のことを考えるには絶好の機会ですが、今回のオープンラボでは、国策、マクロとしての節電アクションではなく、ミクロ、すなわち我が事に置き換えて、「なぜいま節電をしなくてはならないのか?」ということを多角的な角度から議論するセッションとなりました。
まず冒頭、クリエイティブ・シティ・コンソーシアムを代表して東急電鉄の東浦亮典氏から、今回のオープンラボ×まち塾・まちライブラリーセッションの趣旨説明を行いました。
次にまち塾・まちライブラリーを代表して森記念文化財団の礒井純充氏から、まちライブラリーの説明、各自が持参した本を通じた自己紹介のやり方等について説明がありました。
基調トークは、早稲田大学の友成真一先生による「ミクロからみた節電」という情報インプットの時間です。友成先生は、元通商産業省官僚で、かつてエネルギー庁にも在籍されていたので、日本のエネルギー政策の中枢にいたわけですが、現在は学術に身を置かれているので、要はエネルギー問題の裏表を知り尽くす立場にあります。
今回も持論の「蛸理論(問題の本質は、蛸壺ではなく蛸にある)」を援用して、ときに哲学的に、またあるときは政治的、社会学的に節電問題の本質に切れ込んでいきます。
メディアを含めて原発、エネルギー問題は百家争鳴状態ですが、良くも悪くも政府や官僚はエネルギー問題を支配しようとしてきた歴史があります。そのなかで、国民に対しては巧妙にエネルギー問題の本質に気付かれないような情報操作をしてきたとも言えます。
一方、国民側も問題をマクロ化、外部化することによって、我が事意識を忘れ、お金を支払うことによって、快適な生活を送るために、電気をいつでも、いくらでも使える錯覚を植えつけられてきたとも言えるかもしれません。
今回の節電問題を契機に、どこでどのように電気は作られているのか、自分のライフスタイルに照らして、どの程度の電気が必要なのか、どのような生活を送っていけばよいのかを一人ひとりがミクロ視点で考えていくことが大切ではないかという視座を与えてくれました。
二番目の登壇者は、クリエイティブ・シティ・コンソーシアム法人会員でもある、ビッグバンハウスの小川巧記氏です。小川氏は、名古屋での「愛・地球博」や横浜での「Y150・横浜開港150周年」の市民創発イベントのプロデューサーを務められた方ですが、今回二子玉川を基点に「節電縁日2012」という市民創発イベントを仕掛けようと考えられています。今回は「二子玉川での節電縁日の夢を語る」というテーマでお話をいただきました。
小川氏は「愛・地球博」での事例をひいて、いかに市民が自発的、能動的に創発活動をしていくかを考えていくプロセスの中で、「コ・ココ・ココロ・ココロミ」という語呂合わせのようなコンセプトを提唱しています。まず「個」で考え、「ココ」で行動を起こす。「心」が通い合うメッセージを発し、新たな「試み」を仕掛けていく。
こうした実績をもとに、二子玉川から市民を巻き込んで、節電メッセージとアクションを起こそうと企画しており、今日のオープンラボを皮切りに、7月21日には「節電井戸端会議」をカタリストBAで開催し、まずは玉川町会はじめ、地元の方々とともに我が事としての節電問題を考えてもらいたいと語っています。続いて、こどもが参加できるペットボトルとLEDライトを使った節電ワークショップを開催したり、夏には古き良き縁日の雰囲気を活かした「節電縁日」を開催し、夕涼みを兼ねて、多くの市民が二子玉川に集うことによって、各家庭での使用電力を削減し、ピークカットに地域として貢献しようと呼びかけました。
三番目の登壇者もコンソーシアムの法人会員、ビットメディアの高野雅晴氏です。高野氏は、本業としてICT技術を活用した使用電力のみえる化に関する取り組みをしていることもありますが、ご自身も二子玉川周辺に居住されていることもあり、日本全国の中でも世田谷区、二子玉川が地域として最も節電アクションに熱心に取り組む場所にしたいという思いもあり、「ICTを活用した創電「電気玉」プロジェクトの夢を語る」というテーマでお話いただきました。
高野氏は小宮山宏先生が会長を務める一般社団法人スマートプロジェクトも運営しており、現在「家庭の節電行動2012」という活動も推進しています。これは各個人が専用Webサイトに登録し、独自に行った節電行動を記録し、達成度に対して企業協賛による景品を得られるというもの。
東京電力および関西電力管内では、こうした節電エコポイントとネガワットというコンセプトで具体的な節電行動を国民に呼びかけているので、世田谷区、二子玉川でも「お出かけ節電キャンペーン」と銘打って、ピーク時間帯に特定の場所に買い物、飲食、エンターテインメント目的で外出し、地域として節電してはどうかという提案をしていただきました。この節電行動は、地域での創電と同じ意味を持つので、ドラゴンボールの「元気玉」をもじって、「電気玉」と称して、明るく楽しく行動しようということです。1万人の節電アクションは、メガソーラー発電に匹敵するので、「節電縁日2012」のコアコンセプトとして、今夏二子玉川で取り組みましょうという夢を語っていただきました。
このあと、友成先生、小川氏、高野氏の3名で鼎談方式で、お互いの論点確認を踏まえ、言及しきれなかった視点の共有、意見交換を行い、議論を深めていきました。
会場の参加者からの質疑応答も交え、ここまでミクロ視点に落として節電について考えたことは未だかつてなかったのではないかという意義深いセッションとなりました。
最後は、参加者が持ち寄った「エネルギー」「節電」「省エネライフスタイル」等の本をもとにテーブルごとに自己紹介および今日の議論をベースにした各自なりの節電アクション等についてお酒を酌み交わしながらディスカッションを行い、オープンラボ×まち塾・まちライブラリーセッションを楽しく終えました。
以 上
<レポート:東急電鉄 東浦>