2011年4月25日、クリエイティブ・シティ・コンソーシアムの活動拠点「カタリストBA」が二子玉川ライズ・オフィス8階にオープンし、同日、コンソーシアム主催、東京急行電鉄株式会社・コクヨファニチャー株式会社の共催でオープニングイベントが開催されました。
アイデアを持つ多様な人々と組織の枠にとらわれない多様な交流によって、つながりやプロジェクトを生み出し実験する場として創られた新しい空間に、延べ約210人が来場しました。
イベントの概要は下記の通りです。
オープニング
初めに、本イベントを共催した東京急行電鉄株式会社の高橋専務と、コクヨファニチャー株式会社の黒田代表取締役社長より挨拶が行われました。
高橋専務は、「世界を代表する国際企業から、専門技術を持つ中小のベンチャー企業までが集う本コンソーシアムの取り組みは、業界の枠を越えてイノベーションを起こしていこうという、民間発意の過去に例を見ないユニークなものである。『カタリストBA』は、優れた才能を持つ魅力的な人材の交流の場として、コンソーシアムの活動を機能面から支援していく」と述べました。
お二人の挨拶をうけて、コンソーシアム松島副会長より、「カタリストBAから ~コンソーシアムの役割と活動内容」と題して、二子玉川が目指す街、新しいアーバンモデルの提案と実験、コンソーシアムが目指すオープンイノベーション(ソーシャルイノベーションとビジネスイノベーションの両立)、カタリストBAから生まれるもの等について方向性を示して頂きました。
以下、4名の先生方による特別講演の内容を紹介します。
講演1 中村伊知哉氏(慶應義塾大学教授)
「日本のメディアコンテンツの展望 ~クリエイティブ・シティを目指して~」
<内容>
□震災で感じた4つのこと。 ・IT ・通信放送の融合 ・クールジャパン ・復興
東日本大震災では、携帯電話がつながらなかったが、インターネット(ソーシャルサービス)はつながった。震災をきっかけに、通信メディアの融合が一気に進んだ。広島の中学生が始めたTVを撮影してUstreamに流す動きをどこも止められなかったため、テレビ(NHK)をネット(Uストリーム)で流し始めた。20年動かなかったことが、ふとしたきっかけで動くことがあるんだと感じた。
□震災は日本の評価を海外から聞く機会となった
デマ情報などが拡散したが、すぐに収まり日本という国の強さを感じた。震災後の日本人の勤勉な姿が報道され、日本=かっこよいという評判は高まった。
しかし、その後の原発対応で評価・評判がまた下がってしまった。どうまたクールジャパンと言われるようになるのか。
自粛ムードは今後を考えると心配である。どうやって自粛を取り除くかが、復旧に向けてのテーマになっているのではないか。
□映像がリアルタイムで見られる時代がもたらしたもの
2001年9月11日、アメリカではテロを映像はリアルタイムに見ていない(早朝や夜間のため)、日本ではリアルタイムの映像を見ていた。これは、インターネットが普及して以降の初めて起こった重大事件。
世界中を映像でつなぐ世の中がやってくると言われていた。その当時はお互いをわかり合い平和になると言われていた。しかし、実際はけんかが増えた。ネット社会は戦争を止めようとした。しかし止まらなかった。戦争が起こり、GPSで効果的に爆撃できるようになっていた。同じ技術を使い、良くも悪くも使われる。ユーザー次第で変わってくる。
80年代、東海岸の大学の研究所で技術をつくっていた。90年代、西海岸の企業がつくっていた。21世紀、日本やアジアの時代になるのではないか。理由はユーザーが面白いから。
10年前から日本は進んでいた。欧米では携帯電話=電話だが、日本では、携帯電話=指と目のメディア。ユーザー(女子高生)が使い方を広げた。企業の意図ではなく、女子高生がそういったコミュニケーションを求めていたから。
平安女性は仮名(かな)文字をつくった、平成女性はデジタルの文字をつくっている。
□日本のネットユーザーの力
2001年のインターネット投票によるTIME誌のパーソンオブザイヤー第1位に田代まさしが選ばれた。(第2位はオサマ・ビン・ラディン) タイム誌はなかったことにしようとしたが、パワーシフトを感じた。西洋のエスタブリッシュメントが東洋の匿名のユーザーにしてやられた。このようにネットでは一夜にして立場の逆転も起こる。
「きょうの猫村さん」の作者は元自分のアシスタント。アシスタント時代から猫の絵などを描いていたので、ネット上に公開させたら連載の話が来て今は億万長者。今では自分がアシスタントみたいになっている。
□日本から世界への情報発信
2006年のTIME誌のパーソンオブザイヤー第1位は「YOU」(あなたです)。今頃そんなことを言っていると思った。
日本とアメリカには差がある。アメリカは技術が新しいモノを生み出す。日本の場合、新しいモノを生み出すのは若い人。良い悪いではなく、社会の違い。このクリエイティビティをどう活用するのかは、我々の役目ではないか。
「一億人の歩くテレビ局」を2000年にシャープへ提案したが、受入れられなかった。しかし、今では既に実現している。
ネットの中で使われている言語では、日本語37%、英語33%で日本語が世界で一番使われている。自動翻訳技術も発展するので、日本から世界へ情報発信が進んでいくのではないか。京都大学のカンニング事件は、教えあい支え合いの先駆けではないか。デジタル化が進んでも社会側がの変化が追いついていないことが如実に表れているのではないか。
□今、将来を予測すること
カメラを顔に埋め込み、自分が見たすべての映像を見てネットにアップすると言うことを数年前に考えた。70年分の人生を記録するには、10テラバイトの記憶容量があればよい、やろうと思えば10万円でできてしまう。
しかし自分はそこで思考が止まった。足りないのはその後に何が起こるかを考える空想力。550年前グーテンベルクによって活版印刷が生み出された。発明した技術がどうなるか空想できたのだろうか。今はIT革命が数世紀後にどうなっているのかをイマジネーションする良いチャンス。ファミコンは世界を変えた。
映像を見るだけのものから、映像で遊ぶことを可能にした。
□ネット配信とタブレット端末の台等
1993年、共和党(ブッシュ)から民主党(クリントン)にアメリカは政権が変わった。日本も政権が変わった。
この時、米国は情報ハイウェー構想を提唱し、日本ではマルチメディアが唱えられた。2009年、また同じく共和党(ブッシュJr.)から民主党(オバマ)にアメリカは政権が変わり、日本も政権が変わった。これから何が起こるか。
スマートフォン、タッチパネル、電子書籍、デジタルサイネージが一斉に普及してきている。メディア、業界の変化以上に、ユーザーの変化は早い。現在のコンテンツ提供比率は、パッケージメディアが6割、ネット配信が4割。
今後はネット配信がどんどん増えていくだろう。以下2つの事例がメインストリームになると考えている。
□デジタルサイネージとデジタル教科書
デジタルサイネージは、すべてがネットワークでつながっているメディアになっている。多くの業界を巻き込んだコンソーシアムができあがっている。本日この話をするのは、町のプロデュースが変わってくると思うから。
都市によってデジタルサイネージの使い方に違いが出てきている。多くの街でネットメディア化が見られる。
広島の市電、金沢のバス、ソウルのバス停、ヘルシンキ、NYのタイムズスクエア、これらは街の特徴を現している。
二子玉川では、その特徴をどう出していくのか。デジタルサイネージの使い方でよく見られるのは、アートと結びつけること。
日本ならではのデジタルサイネージのコンテンツは何があるのだろうか。自動販売機のデジタルサイネージ化はその一つの事例といえる。大型ディスプレイや携帯の連携も日本の特徴。世界へビジネスモデルを輸出したい。
ローカルにひも付いたコンテンツをどう生み出すのかがこの分野の醍醐味。
デジタル教科書教材協議会をつくり進めている。クリエイティビティは、若い人からの教育だと考えている。すべての子供たちにデジタル機器を配布することを2020年に実現すると決めた。しかしこれでは遅いと考えている。5年ほど早めたい。韓国は2年後に全員に配るし、ウルグアイは既に配り終えている。MITの100ドルPCは世界中に広まっており、このままでは日本は世界から遅れてしまう。
学力向上以上に、映像や音楽などをつくり出せることが重要になるのではないか。世界でクリエイティビティ向上のワークショップをしているが、日本の子供のクリエイティビティは極めて高い。授業中にパラパラ漫画づくりなどで鍛えているからかもしれない。
また、フランスや日本の子供でクリエイティビティの発揮の仕方が違う。なぜ違うかはわからないが、この違うパワーをどう発揮させていくのか。フランスではジャパンエキスポが毎年開催され、去年は18万人参加している。
コスプレは世界で広がっている。日本のお菓子がブームになっている。モノ作り力としてのおいしさと、文化力としてのパッケージが変なところが受けているのではないか。
□クールジャパンを認識すること
日本は自分たちのすごさに気づいていないため、ビジネスモデルできていない。ライフスタイル含めデザインし、丸ごと輸出するというチャンスが日本にはあふれているのではないか。クールジャパン(外国人から見た日本の良さ)
□場の力へ
クリエイティブ・シティには、創造(生み出す)、共有(つながる)、発信の3つが必要ではないか。
それを支える環境として、教育(創造)、基盤整備(共有)、意志(発信)が必要。これらを作り出すために、場、サロンが必要だと思っている。
講演2 西尾久美子氏(京都女子大学准教授)
「京都花街のビジネスモデル ~「舞妓はん」の育成と「一見さんお断り」に学ぶ~」
<内容>
□京都のコードから読み解く
京都には意味が込められている。どう解釈し、どうつながるかに皆がどう関わるかでカタリストの意味が変わってくるだろう。
衣装のコードについて。今日の着物はビジネススーツに相当。柄は全部上向きになっている。上昇することを表している。また花柄の花も特定できにくいようにしている。特定のイメージに結びつけると不都合なるお客様がいる可能性があるため。重ねる帯も松葉の衣装。常緑樹。衣装のコードは誰かが流行でつくっただけではなく、人のネットワークと伝統によってつくられていく。京都のおもてなし産業がインフラにあるからできる。
□舞妓、芸妓の現状
サービスプロフェッショナルの人たち。技能があり、師匠の許可がないと客の前には出られない。体力がないとできない仕事。芸妓さんはプロフェッショナルであり定年はない。80歳を超えてもやっている人がいる。舞妓はこの40年は増えている。これは規制緩和の影響がある。舞妓になった後、芸妓になっていく人たちも多い。
技能の品質がわかるネットワーク、サービスの質を管理するネットワークの両方がある。襟や鼻緒の色から経験がわかる。鈴の音でどの子が売れているのかもわかる。5年間で、舞妓さんを育成する。技能などを体にしみこませていく。
昔は舞妓から芸妓に変わるタイミングにスポンサー(旦那さん)がついたが、今はない。サラリーマン社長では無理。
□演ずるはプロジェクトチーム
お座敷(プロジェクトチーム)は一日に3回くらい変わり、チームメンバーも毎回替わる。待ち合わせ場所が伝えられるくらいで、事前準備できるプロジェクトはほとんどない。仕事のスキルがはっきりわかることが重要なので着物を見ただけでスキルがわかるようになっている。舞妓は5年くらいすると、芸妓になっていく。
仕事の場は海外にも広がっている。着物の柄も外国人にわかり易いように工夫されている。
□ニーズからのコーディネイト
京都のお茶屋さんはコーディネーター。京都のお茶屋は料理も外から頼む。京都中の料理屋、ホテルいろいろな場所に芸舞妓が入れるようになっている。顧客のニーズに応じ、日本の伝統を伝える、人と人をつなぐスキルが必要なときなど、芸舞妓はどこにでも出張する。芸舞妓の時間あたりの単価は一緒。
□品質を守り抜くための教育制度
花街の疑似親子関係と姉妹関係により教育をする。先輩(お姉さん)からOJTの責任者を決めてからデビューする。デビュー時にお姉さんの名前から一字もらって命名される。資本関係のない置屋同士のネットワーク(ライバル関係も含む)により、壁を越えたOJTが徹底している。これが未経験者でもレベルアップしていける仕組みとなっている。
最初は下唇しか口紅を塗れないことにより、見ただけで新人かがわかり、どこでもOJTを受けられるようになる。
他の置屋の新人であっても面倒を見ることは、業界としての品質に責任を持つ仕組みである。人事コンサルが入ったわけではなく、長い時間をかけてできあがった仕組み。
□興業化(システム化)によるビジネスモデル
京都内部から芸舞妓のなり手が減るという業界全体の危機を経験し、京都以外の出身者を受け入れだしてから、ここまでシステム化されるようになっていった。人材(芸舞妓)、学校(女紅場:Off JT 働きながら学ぶ仕組み)、
興業(歌舞練場)のトライアングルリンク、すべてがWin-Winになるようになっている。
□「座持ち」ができるということ
現場で何ができるかがビジネスモデルの肝となる。「座持ち」の良い人を皆が求めている。座持ちが良いとは、顧客の潜在的ニーズをつかみ、その場その場に臨機応変に対応できる力が高いこと。芸舞妓の評価は360度評価。
業界の壁を越えて連携している。なぜ連携が必要か。顧客にとって常によいものを提供するため。
「一見さんお断り」はこのためにある。在庫なし、時間消費というビジネスを行なう上では顧客情報が重要になる。
質の良い顧客と継続的な安定取引関係をつくることが業界の維持につながっている。後日精算も質の良い顧客との取引を行なうための仕組みになっている。
□日本の伝統産業から学べること
おもてなし産業のビジネスモデルには、アンバンドリング(専門業者の分業)とリバンドリング(お茶屋の組み立て)のメリットを生かし、全体としてサービスの提供レベルを維持・向上するために、サプライヤー間の緊密な情報連携が必要となる。「一見さんお断り」、「置屋」、「学校」、「お姉さん」などは制度として緊密な関係を持つ。
制度間を血液と筋肉のように情報と取引がつなぐ、さらに、情報の質は人間関係(疑似家族)で、取引の質は評価(売上げの裏づけ)で担保される。顧客満足度を上げるために、新しい試みをする自由(業者間競争)があり、うまくいくと花街に流布する。家族関係が情報を運び、新しいサービスも生み出している。「お茶屋バー」は、新規の海外顧客を引き入れるなど、新しい顧客を開拓している。業界全体として満足度向上が実現され、結果として業界が続く「ダイナミズム」を有する。多様で複層的な競争といえる。価格競争ではなく、価値競争がイノベーションを生む。
日本の伝統産業からのヒントは多いと思う。
「よろしゅう、おたのもうします。」 自分の技能をお客さんの前、師匠の前で披露するときに言う言葉。
自分の技能を発揮し、評価してもらいたいときに言う言葉。(「京都花街の経営学」という本が本日の講演のベース)
講演3 紺野登氏(多摩大学大学教授)
「知識都市の時代 ~「カタリストBA」に期待すること~」
<内容>
□イノベーションの起こる場
カタリストのような場が、都市、経済、社会を変えていくことができるということについて話したい。
都市化する21世紀。都市に住む人口が、農村に住む人口を2008年から2009年にかけて超えていっている。世界人口の半分以上が都市に住むようになっている。地球環境問題、少子高齢化などの問題の根底にあるのが都市化。
過疎地の少子高齢化も問題だが、都市部の高齢化が問題になっている。
混沌からのイノベーション。世界の都市を調べると大きな問題があることがわかる。例えばモンゴルのウランバートル。マンホールキッズが多く生み出されている。しかし、都市化には可能性も含まれている。50歳以上であれば、ホールアースカタログを読んだことがあるかもしれない。ヒッピー文化をつくった雑誌。創刊者が、都市の無断居住者たちは恐ろしく機知に富み、生産的であり、彼らが21世紀のイノベーションを担っていくといっている。
現場からの、社会的なイノベーションの創発。たとえばタタのナノ。見た目は車だが、発想は最小限の移動シェルター。
密集都市のモビリティ・イノベーションとしてグローバルな影響を生み出す。
□21世紀型へむけてのイノベーション
都市化はグローバルな課題。先進国、たとえばアメリカでは都市人口が50%を超えたのは1920~30年代。
21世紀はマルチライフ・マルチジョブの時代。19世紀には、働くとは一生従事することを意味した。
20世紀になるとサラリーマンが登場。一生サラリーマンとは思っていない。退職後は別の職業に就いたりする。
日本のライフシステム、たとえば9時に全員が出社、17時に退社は環境には優しくない。新しいライフスタイルを生み出す必要がある。創造的知識都市への要請がここにある。現在の復興税の話は悪代官の発想。飢饉の時にさらに年貢を取るというようなもの。復興で元に戻すと言うよりも、都市型サービス経済によるイノベーションを生み出す時代に来ているのだと思う。
□クリエイティビティとは
狭義の創造性経済は、クリエイティブな仕事をしているデザイナーなどの活躍のこと。しかし今は狭義の話だけではないのではないか。現在の企業価値の源泉は、無形資産が引っ張るようになってきている。クリエイティビティは狭い世界のクリエイティビティだけではなく、産業全体に関わるクリエイティビティが関係している。
広義の創造性経済は、知識資産の比率の高い業種:知識創造・イノベーションで発展する経済。単純なモノからコトへではない。創造性経済とは「いきいきとした人間中心経済」を作り出すこと。人間中心の顧客価値視点、サービス型ビジネスモデル、従来の産業・業界・市場の垣根を越えた融合・進化が求められる。
□クリエイティブ都市としての事例
創造性経済×知識創造=都市型サービス経済
ガルブレイス氏は、日本は近代の効率重視に走りすぎている。日本に一番ないものは芸術とデザインであるといっている。
知識都市という考えは、自分が考えたモノではない。バルセロナ、ビルバオ、ダブリン、デルフト-ユトレヒト、ストックホルム、モントリオール、シンガポールなどが目指している。知識資産の形成という視点から都市ネットワークで世界を見る。成立条件は、研究開発機能、知的ネットワーク、情報環境、文化的多様性、都市インフラなどの整備がある。知識経済が現実のものになってきている。たとえばビルバオ。鉄の都市。1970年代の経済危機、グローバル化への乗り遅れ、人口減少などで衰退化していた。鉄鋼都市の復活として戦略を立ててもうまくいかなかった。しかし、ニューヨークのグッゲンハイム美術館の誘致が再活性化のスタートとなった。
□「都市田園」というコンセプト
忘れてはならないのは、都市と郊外の関係。都市と郊外の境界線に新しい知が生まれる。
ポスト近代都市:多様な都市のモデルがある。
・エッジシティ(郊外の境界に生まれる都市地域。ex.シリコンバレー)
・フラクタルシティ(都市-郊外の距離のギャップを超えた都市間の相互的発展)
・分散型都市(エリアによる都市機能の分散協業)
二子玉川は東京のエッジにあり「都市田園」(都市と自然の共生圏:Urban Green)としての独自的な潜在力を持つ。
知識都市×都市田園=Creative City 二子玉川 と考えることができるのではないか。知識資本(周辺地域、R&D/イノベーション機能、渋谷とのアクセス)、自然資本(多摩川、国分寺稜線)、経済資本(企業ネットワーク)が融合することで実現できるのではないか。
新しいワークスタイルの人々を引きつけられるかが鍵となる。現状では二子玉川はビジネスゾーンのイメージがない。
9時~17時でない新しいワークスタイルが求められるているのではないか。世界でもっとも男性社会率が高い国が日本。
女性感覚を持つ必要がある。ただ単に女性を招き入れれば良いのではない。新しいワークスタイルを提示し仲間になってもらうことが必要。また震災により外国人がいなくなっている。一端消えたものは同じようには戻ってこない。
新しいビジネス、新しい価値を提示する必要がある。
□フューチャーセンターと二子玉川
知識都市が経済の発展を担う。下記モデルを促進する拠点が二子玉川になり得る。
<発展モデル>
持続的経済成長、QoLの向上
↑
イノベーション創出の「場」
↑
多様な知、アイデア、技能へのアクセス
↑
文化的・社会的な関係性資本(Social Capital)
一番重要な鍵は、「場」となる。都市の新しい機能としてどうつくるかが課題。フューチャーセンターという考え方が重要になる。欧州初で日本に広がってきている。ヨーロッパの省庁、企業が始めた動き。社内外の対話と実践的知識創造のための新たなオフィス機能(サービス)であり、現場をつなぐイノベーションの場となっている。話すだけでなく、実践することが大事でアカウンタビリティを持っている。
一つだけあってもダメで、たくさんのこういった場がつながっていくことが大事。二子玉川なりの場が必要になる。
バウンダリー・オブジェクトとしての場。バウンダリー・オブジェクトとは、異なるシステムやコミュニティなどの境界にあって、これらをつなぐものとして生み出される対象や存在をいう。とくに「内向き」のシステムやコミュニティ内だけでは知識創造は起きにくい。
→システム間、組織と環境との間での相互作用、創発が起きる媒介が不可欠。
Catalyst: Co-emergenceを引き起こす場。潜在的なソーシャルキャピタル(capital in waiting)を活性化させる「場」。
多様な個によって形成される「場」から同時的に知が生まれる(創発する)仕組み、その前提となるビジョンの共有、リーダーシップを生み出していく必要がある。
講演4 赤池学氏(ユニバーサルデザイン総合研究所所長)
「未来社会仮説 ~ポスト震災のまちづくりに向けて~」
<内容>
□これからの街づくりにむけて
これからのエネルギー、地域交通について、グリーンデザインの考えについて伝えたい。
紺野先生と共にフューチャーセンターの言い出しっぺでもある。都市型のビジネスをインキュベーションしていく
(無償の)オフィスとフューチャーセンターを捉えている。
新しい町作りの技術、ビジネスモデルをプロデュースしていく。そのためにファシリテーターの存在がいる。
サステナビリティ、サバイバビリティ(自立)、ユーザビリティはこれからの街づくりに必要な評価軸ではないか。
□プロジェクトへのステップ
プロジェクトの推進と計画への反映形態として、以下のステップを考えている。それぞれのステップを促進するファシリテーターを求めている。
ステップ1:個別参画企業の先進技術/システムの導入実装と実証評価
ステップ2:BtoBによる先進技術・システムのビジネスモデル開発
ステップ3:新規バリュー・デザインのデファクトスタンダード開発
どういう技術を二子玉川に入れていきたいのか。そのためには、これからの世の中がどう進むのかをざっくりと共有していく必要がある。4つの未来社会仮説。
・2000年頃は「自動化社会」。効率化はしたが、負の遺産をたくさんためた。
・2010年頃は「最適化社会」。エネルギーベストミックスといわれたりする。しかし震災後、3割くらい電力量が減っても大丈夫かもしれないと気づいてしまった。中央の考える最適化の意味を疑い始めてきた。最適化社会は3.11で終わったといえるかもしれない。
・2015年頃は「自律化社会」。誰もが情報を集めることができるようになっている。各人が自律的に行動できるようになってきている。多様なワークシフトが起きてくるのではないか。自律化社会時代のオフィスとはどうなるのか。対話・議論し評価したり育てたりしていくべきではないか。
・2020年頃は「自然化社会」。自律的に連携ができると言うことがわかってくると、上手に自然資本を取り込んでいくビジネスをするところがでてくるのではないかと考えている。自然化社会のビジネスはどうなるのか。
これらを具体的にカタリストBAで探っていきたい。
□これからのグランドデザインへ向けて
今やる気のある官僚たちからひっきりなしに相談を受けるようになってきた。テーマは地域自律分散型電源社会へのグランドデザインについて。
1. 送電網を公共財に、どういう発送電分離のオピニオンと議論の沸騰
2. ヨーロッパ型電力体系への移行を希求する声の台頭
3. 電力の3/4を占める事業系を優遇してきた電力料金体系の見直し議論の活性化
4. それらを見越した事業系の省エネ、自律型電源導入の加速化
今後は次のような脱原発社会のグランドデザインが台頭するだろう。このような時代のオフィスビルはどうあるべきか、再定義が必要だろう。
1. 送電網と発電自由化による自律型電源の普及に伴う創エネ社会の実現
2. 事業系電気料金の見直しによる産業部門の省エネの加速化
3. 電力依存型産業の戦略的ダウンサイジングと生命産業への転換
4. 原発不要論のエビデンス化と原発安楽死のためのアクションプランの構築
5. 自然エネルギー推進によるヨーロッパ型雇用創出社会への転換
6. 歩行者・自転車・低速モビリティ対応の都市計画、道路計画の台頭
7. 多消費型ライフスタイルの見直しとダウンシフターの増加
8. テクノ・ルーラルズ(田舎のクリエイティブクラス)型ライフスタイルの推進
9. 沿岸非定住型開発、及び山村集落再定住型社会基盤の整備
10. 成長戦略という国のグランドデザインそのものの見直し
ポスト震災後の留意すべき12のテーマ。二子玉川から考えていくことができるのではないか。
1. 電力自由化を見据えた「自律型エネルギーシステム」の導入検討
2. ガスの画期的利用に配慮した「熱対応スマートグリッド技術」の検討
3. 電力料金体系の見直しを見据えた「省エネシステム」の再検討
4. 採光、卓越風など活用した「パッシブエコロジー技術」の再検討
5. 「免震・制震技術」の再整理「浸水・液状化対応技術」の検討
6. 災害時のエリアマネジメントに対応できる「ファシリティ」の検討
7. 「緊急・災害避難場所」としての公共緑化空間デザインの検討
8. 持続可能な食料、水調達に配慮した水源自治体、生産者連携の検討
9. 放射能汚染状況のモニタリング技術・解析技術の検討
10. タイムシフトに対応できる「オフィスシステム」の再検討
11. オープンイノベーション就業に対応できる「オフィスデザイン」の検討
12. 多様な移動に対応できる「モビリティシステムと路面デザイン」の検討
オープンイノベーションをするにあたり、企業の守秘義務などが問題になる。だからこそ水面下での動きがますます重要になるのではないか。欧州のフューチャーセンターは水面下でのプロジェクトが非常に多いと感じている。
□次世代環境WGプロジェクトの開発テーマイメージ1
→ポスト震災対応のコンテンツ開発テーマ
1. ガスタービン、ガスエンジン、コジェネ、SOFCなどのガスの面的利用技術
2. 自然エネルギー・バイオマス活用などによる創エネ技術
3. スーパーキャパシターなどの蓄電技術
4. 電気自動車、ロースペックコンパクトEV、EVバイクなどのモビリティシステム
5. ICTを活用した先導的BEMS技術
6. LED・有機EL照明・隔射空調などの多様な省エネ技術
7. パッシブエコロジー建築・デザイン
8. 蓄光サイン・衣装材などのゼロカーボン技術
9. 節水・貯水・水上化・上中水利用技術
10. 人口炭酸泉システム・・・
日本初「生グリーン電力」で、新丸ビルの全電力が再生可能エネルギーに。二子玉川のRISEも同じようにできるのではないか。環境共創イニシアチブにより、良い意味で官僚を巻き込んでいきたい。
中心市街地を低速交通ゾーンに変えたナント市。信号を取っ払ってロータリーとして整備することで、事故が半減し渋滞も消えた。交通ゾーンは弱者を守ることが本来のあるべき姿ではないか。ヨーロッパの交通システムからは学べることは多い。21世紀のクリエイティブクラスは、移動手段が自転車になっているかもしれない。
こういったことを考えていくのが、Doタンクとしてのフューチャーセンターの役割ではないか。
□エコステーションとしての提言
二子玉川を中核とする東急コミュニティは、ガソリンスタンドがいらない、信号機がいらない、ガードレールもいらない。
これからのデベロッパーは社会提言ができるし、していくべきではないか。エコステーションのキーワードは以下ではないかと考えている。
・ゼロ・カーボン(環境配慮の取り得る施策の一つでしかない)
・ネイチャー・ギフト
・ハーベスト・デザイン
・デザイン・オブ・メモリー(その場所の歴史や地縁)
生物多様性オフセットのビジネスモデルがアメリカではじまっている。日本でも検討が始まっている。
□感性価値=テクノロジー×エコロジー×ランドシャフト
ランドシャフトとは、ドイツで生まれた概念で、英語ではランドスケープ(landscape)と訳され、日本では「景観」として狭義に理解されている。本来は「語感+心で感じるものの総体」を意味する言葉で、脳が捉えることのできるすべてが、ランドシャフトの構成要素である。美しい風景、妙なる調べ、香しい匂い、美味しい味、素晴らしい肌触りなど、居心地の良いランドシャフトのもとでは、人々が生き延びやすく、美しいランドシャフトは、人々の生存意欲を支える、と説明され、気持ちよいこと、心地よいことが、良いランドシャフトの定義である。
レセプション
講演終了後に行われたレセプションには、東急電鉄野本取締役社長他駆けつけて頂いた多数の方々が参加し、リラックスしたムードの中、コ・ワーキングの実験オフィスとなる「co-lab二子玉川」の田中社長他の挨拶、カタリストBAの空間説明、来場者間での交流・歓談が行われ、盛会のうちに終了しました。