Open Lab 『ここまできた!心の奥底を測る表情・視線分析技術』 レポート
11月29日(木)19時よりカタリストBAにて今年最後のオープンラボが行われ、32名が参加しました。
今回は、視線を記録するアイトラッキング技術をマーケティングリサーチに応用するGMOジャパンマーケットインテリジェンス株式会社と、動画像によるリアルタイム表情解析技術をもつ株式会社夏目綜合研究所という双璧によるデモンストレーションを交えたプレゼンテーションが行われました。
■プレゼン1:GMO-JMI株式会社 工藤氏
アイトラッキング技術と既存のリサーチノウハウを統合し、消費者行動をより深く読み取ることにチャレンジされている工藤氏より、最先端技術をビギナーにも分かりやすい言葉で説明下さいました。
1.アイトラッキングって何?
眼球運動を特殊機材によって記録し、何を/どのように見ていたかを明らかにします。(たとえば今日この会場に来るまでも、駅を降りてから様々な表示などを探したり確認しながらたどり着いています。)
ではなぜアイトラッキングを行うのかというと、購買行動をはじめとする消費者の行動を定量的なデータとして可視化するためです。
利用する機材としては、①据え置きのディスプレイタイプ、②ゴーグルタイプ(移動中の記録が可能)、③プロジェクタータイプがあり、これらのハードと、分析用のソフト(GMO-JMI社の場合Eye Square社のvisualizer)をセットで用います。
「目は口ほどに物を言う」というように、視線の動きを明らかにすることによって「無意識」で「正直」な反応を把握することができます。ここで女性の画像を見ている男性の視線の動きが―男性の眼は明らかに、女性の胸元に集中しています。
2.こんなことに使います
アイトラッキングを手がかりの1つにして消費者行動をより深いレベルで理解することができます。その用途には下記のようなものが挙げられます。
・購買行動調査
買物客の心理を探ることでコミュニケーション要素を組み立てる、ショッパーマーケティングに活用できます。視線を手がかりに買物客が最初の3秒でどこに注目するか、店舗内でどのような動線をとるかなど無意識レベルの購入決定プロセスを明らかにすることができます。
・デザイン評価
商品パッケージのデザインや車のデザインなどの評価に利用します。ユーザーがロゴや商品名を正しく認識しているか確認できます。
・ユーザビリティテスト
ユーザーの商品操作方法と視線の動きを記録し、どの操作ステップに迷いがあり、時間がかかるかなどを明らかにします。タブレット端末やウェブサイトの評価にも利用されています。コンテンツが制作者の意図に沿って読まれているかどうかを確認できます。
消費者が商品棚で品定めする様子を、“視線のヒートマップ”で表した動画の紹介がありました。ユーザーが上部の棚に置かれた商品に注目し(=視線が集中した部分が赤く表示される)、手に取ったり購入したりしている様子が時間とともに分かります(購買などのアクションは画面上に◆マークで表示)。このような結果を分析することによって、他社の商品に視線が流れるのをブロッキングする方法や、ユーザーによる購買パターンを考慮に入れた商品配置のヒントなど、マーケティング施策を検討するために有効な情報が得られます。また、店内のエリアごとに滞在時間を記録し、店舗内行動を可視化することもできます。
さらには、属性間で結果を比較することによって、若者と高齢者、既存商品と新商品、デザイン変更の前後などの違いを傾向値として蓄積していくことができます。
3.こんな感じです(デモンストレーション)
ここで、ゴーグルを装着し、記録メディアを身につけた女性スタッフの方が会場に登場し、周りを歩いてデモを行いました。デモ映像では、彼女が見た風景と視線の動き、注目したものが赤い円となって表示されました。
別の応用例として、雑誌とのコラボで、「デート服で見ている場所って本当はどこ?」という企画の紹介がありました。読者の視線の動きと集中度(赤い部分ほど視線が集中)がヒートマップで表示され、男性の視点が赤裸々になりました。
その他にアイトラッキングを活用している場面の事例としては、ショッピングモールや住宅展示場のモデルハウス(レイアウトやインテリア)、カーディーラーのショールーム等があります。
4.アイトラッキングの結果分かること
調査前に立てておいた仮説と実際の結果を比較することで考察が得られます。調査者による観察と視線動画からの気づきを合わせることでより深い理解、洞察に到達するのです。
「視線+○○」の組み合わせ(○○は、感情の起伏、脳波の動き、表情の解析など)により、より深い意味合いが付加された情報を得ることが可能になります。
GM0-JMI社では、「無意識」な視線の動きに加えて、行動観察や、対象者の「意識的」なインタビュー調査も行うことによって、正確な総合評価が得られるとしています。
■プレゼン2:株式会社夏目綜合研究所 菊池氏
かつては瞳孔の研究をされていた菊池氏は、カメラで撮影した人物の表情の動きを数値化し分析する技術を開発しました。
「表情をどう読みとるか」ですが、人間の顔の特徴点(眉、眼、口の周囲など)を18ポイントほど特定し、その変位から動きを数値化し、瞬時に解析します。カメラで顔を撮影すると、リアルタイムでその人の感情が数値化して表示されるのです。
日本人は欧米人に比して表情が豊かではないと言われますが、基本の6感情=「喜び」「悲しみ」「怒り」「恐れ」「驚き」「嫌悪」は世界共通です。感情言語には多寡がありますが、人種や年齢によらず、顔の動きを検出することから感情を特定することが可能なのです。眼鏡やヒゲがあっても検出は可能です(さすがに、マスクをした人は不可能だそうです)。
目の前にいる人の顔をカメラ撮影するだけで、年齢や表情、感情までもが瞬時に分かるということです。現在の技術では、5人を同時に検出することも可能となっています。
デモンストレーションとして、菊池氏自らの表情解析と、スタッフ 佐藤氏の表情解析結果を見せていただきました。カメラで撮影した映像では、顔の複数のポイントの動きが点として捉えられています。それが瞬時にエクセル上の詳細な数値表に計算され、色の異なる波形となって6つの感情のレベルが表示されます。かつてテレビ番組でも面白おかしくとりあげられていたことがありますが、本人の「心のうち」がリアルタイムで可視化されるのです。感情の波形は、「レベル3」を超えると顕著な感情と捉えられます。
6つの基本感情をポジティブ感情とネガティブ感情に区分して、味覚テストや匂いの評価を行うことが可能です。
基本の6感情以外にも、「イライラ」(複数の感情が混ざる)、「侮蔑」、「嫉妬」(怒りがベース)など人間の様々な感情が分かります。個人によっても波形の現れ方が異なります。
表情筋の動きをとって解析することも可能ですが、この方法では暗いところで計測できないなどの難点があります。
この技術の用途としては、カメラを見ている人の感情をリアルタイムで検出・解析できるだけではなく、テレビに映る人や、映画のシーン毎の分析などが可能です。たとえばテレビのニュースで内閣の記者発表をしているときの報道官の感情の動きなど、興味深く読み取ることができます。
夏目綜合研究所では、現在は表情の認識・分析技術を大学や研究機関など学術向けに販売しています。新たなビジネスモデルとしては、ネット、コミュニケーションテレビ、ロボット、ゲーム、モバイル、玩具など様々な応用場面が考えられ、可能性は非常に広がりをもっています。近い将来には、街なかや携帯電話にも組み込まれて、リアルタイムでの分析による商品・サービス販売への応用や、コミュニケーションの支援ツールになるかもしれません。
お二人のプレゼンの後は質疑応答が行われ、実際に目の当たりにした最新技術について会場からは多くの質問が出ました。
また、それぞれの技術を「こんなことに使えないか?こんなビジネスができるのでは?」というアイデアを集め、最後にプレゼンターがNo.1を決定しました。
優勝は、「(視線分析による)お見合いサービス」「(表情解析による)美顔トレーニングアプリ」という楽しいアイデアを提案した東芝の池本様。コンソーシアムより賞品として、「金塊」!ではなく、金塊そっくりの鉱石見本が贈られました。
引き続き行われた懇親会では、「あんなこと/こんなことにも使えそう?」と頭を捻り、意見を交わす姿があちこちで見られ、会話に花が咲きました。
両社の最新情報について、さらに詳しく知りたい方はこちらをご参照ください↓
・GMOリサーチ株式会社(※2012年12月1日より合併)
http://www.gmo-jmi.jp/jp/service/visibility_research.php
・株式会社 夏目綜合研究所