2018.11.30

【7月9日】第4回円卓会議を開催しました。

2017年7月6日(木) セルリアンタワー東急ホテル39F「ルナール」において、第4回円卓会議を開催致しました。

本年度の円卓会議は、「クリエイティブゾーン形成の要件」をテーマに、アドバイザリーボード・メンバー、幹事会社、多摩川流域まちづくり勉強会座長・東京都市大学 環境学部 涌井史郎特別教授、自治体の皆様にもご出席いただき、昨年の円卓会議以降の「多摩川流域圏構想」の進捗のご報告、A.T.カーニー 日本法人会長/パートナーの梅澤 高明様のキーノートに続いて、ご出席の皆様による意見交換が行われました。

【開催概要】

日 時 2018年7月9日(月)14:00〜16:30
会 場 セルリアンタワー東急ホテル「ルナール」
テーマ 「クリエイティブゾーン形成の要件」
イノベーションを生む活動を促進するゾーンと拠点の要件は何か、プラチナトライアングルおよび多摩川流域を想定しながら考える。
スケジュール 14:00 開会挨拶
代表幹事 東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 鈴置 一哉

14:10 前回円卓会議からの進捗報告 「多摩川流域圏構想の進捗について」
事務局長 東京急行電鉄株式会社 都市創造本部 山口 堪太郎

14:25 キーノート 「クリエイティブゾーン形成の要件」
A.T.カーニー 日本法人会長/パートナー 梅澤 高明様

15:00 フリーディスカッション
ご出席者 ■ キーノートスピーカー
A.T.カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤 高明様

■ アドバイザリーボード・メンバー
株式会社三菱総合研究所 理事長
小宮山 宏様

一般社団法人俯瞰工学研究所 代表理事
松島 克守様

東京都市大学 学長
三木 千壽様

NPO法人CANVAS 理事長 慶應義塾大学 教授
石戸 奈々子様

一橋大学大学院 経営管理研究科 教授
楠木 建様

多摩大学大学院 教授
紺野 登様

一般社団法人Japan Innovation Network 専務理事
西口 尚宏様

株式会社リバネス 代表取締役CEO
丸 幸弘様

千葉大学大学院 工学研究院 教授
村木 美貴様

■ 幹事会員
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 CCCデザイン 取締役
天川 清二様

コクヨ株式会社ファニチャー事業本部TCM事業部 事業部長
坂本 雅彦様

大日本印刷株式会社 専務執行役員 ABセンター マーケティング本部 本部長
北島 元治様

株式会社日建設計 取締役常務執行役員
大松 敦様

株式会社三菱総合研究所 副理事長
本多 均様

東京急行電鉄株式会社 取締役社長
髙橋 和夫様

東京急行電鉄株式会社 取締役常務執行役員
髙橋 俊之様

■ 招待者
造園家/ランドスケープアーキテクト 東京都市大学 環境学部 特別教授
涌井 史郎様(多摩川流域まちづくり勉強会 座長)

大田区 まちづくり推進部長
齋藤 浩一様

世田谷区 区長
保坂 展人様

渋谷区 区長
長谷部 健様

川崎市 副市長
加藤 順一様

キーノート
「クリエイティブゾーン
形成の要件」

A.T. カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤高明氏

私は「NEXTOKYO Project」を 2014 年に立ち上げて、 2020年五輪の先を見据えた東京の将来像を構想し、その進化を後押しする活動を続けています。建築、デザイン、アート、スポーツ、ビジネスなど分野横断の12名のチームによる活動です。東京全体の横串のテーマとして「Creative City」「Tech City」「Fitness City」の3つを掲げ、都内のいくつかの街の再開発プロジェクトにも参画。加えて、クリエイティブ人材の就労ビザ緩和や風営法改正の実現に貢献し、最近では日本最大規模のイノベーション集積拠点、「Cambridge Innovation Center(CIC)Tokyo」の設立に向けて動いています。

クリエイティブゾーン形成の要件を考えると、クリエイティブクラスが重要なキーワードであることは間違いありません。しかし、未来のクリエイティブクラスは、今まで我々が考えてきたクリエイティブクラスと同じなのでしょうか。
「日経ビジネス」(2018年7月2日号)の特集で「2025年 稼げる新職業」が紹介されていました。例えばその新職業の一つ、「サイボーグ技術者」は、メカトロニクスの技術だけでなく、生体工学や素材の知識を持ち、それを医療・建設業・運輸業・農業などさまざまな産業の知見と掛け合わせて、新しい用途開発をしていかなければなりません。人体に装着して街に出ることになれば、法規制の見直しで政府との折衝が必要になるケースもあります。

ここからわかることは、これだけ多様なスキルの掛け合わせがあって、初めていろいろな進化が起こるということです。多様なクラスターが、日常的に混ざりあうことで、セレンディピティが生まれる。そのような場をつくれるかどうかが、クリエイティブゾーン形成の要件の1つ目でしょう。ABBALabの小笠原氏が設立した、ハードウェア・スタートアップ拠点の「DMM.make AKIBA」は、未来のクリエイティブクラスが集まる場の好例だと思います。

2つ目の要件は、文化や生活の質が担保される環境です。英国のライフスタイル誌「モノクル」の「世界で最も住みやすい都市」ランキングでは、2017年まで3年連続で東京が1位になりました。東京は世界からみても住みやすく極めて文化度の高い街だということです。

このランキングの定量指標がユニークです。クラブが深夜何時まで開いているか、独立系の書店の数、質の高いランチがいくらで食べられるのか、などの評価軸が含まれていました。

また、2015年に LIFULL HOME' S総研が発表した「センシュアス・シティ(官能都市)」もユニークなランキングでした。食文化の豊かさや、デートをしたくなる街か、魅力的なイベントがあるか、面白い人たちが集まっているか、路上パフォーマンスがあるかなど、ライブ感溢れる評価軸で都市の魅力を語っています。現在のクリエイティブクラスも未来のクリエイティブクラスも、このような要素がある街に惹きつけられて集まる人たちであることは間違いないと思います。クリエイティブゾーンの形成を目指すときにも、ゾーン全体として文化的要素をどれだけ担保できるかが重要になるでしょう。

3つ目の要件は、有能なクリエイティブプロデューサー・チームがローカルにいること。現在のブルックリンは、地元密着のクリエイティブ産業や、テック系スタートアップが集積するイノベーションエリアとして注目されています。その発展は、1980年代にダンボ地域がアートの集積地になったことから始まりました。「ダンボ・アート・アンダー・ザ・ブリッジ・フェスティバル」は米国最大級のアートイベントへ成長しましたが、立ち上げの中心人物は、地元に住むアートキュレーターでした。有名なマンハッタンのハイラインも、解体に反対する地元の住民運動が起点となり、彼らが後に、公園の運営組織を担う形で発展して行きました。

英国でもっともクリエイティブな街の一つと言われるブリストルには、イギリス初のメディアセンターである「ウォーターシェッド」があります。もともとは独立系の映画を上映するシネマとしてスタートしましたが、さまざまな映像産業、2000 年代に入ってからはデジタル産業のイノベーション拠点として発展しました。所属する10名ほどのクリエイティブプロデューサーがメンターとなって、外部から集まるレジデントのクリエイターたちのプロジェクトを支援しています。

100BANCH

2017 年にパナソニック(株)と(株)ロフトワーク、カフェ・カンパニー(株)が共同で開設した、100 のプロジェクトを生み出す「未来をつくる実験区」。35歳未満の若者たちに、各分野のトップランナーによるメンタリングと活動場所を提供し、未来につながる新しい価値の創造に取り組む施設。2018 年 7 月には1 周年を記念し、多彩な活動成果を発表する『ナナナナ祭』が開催された。

渋谷でも、ちょうど1年前に立ち上がった「100 BANCH」というイノベーション拠点があります。若者たちが「100年先を考えて100のプロジェクトを立ち上げる」という、じつに面白い取り組みが進んでいます。そして、プロジェクトを陰で支えているのが、ロフトワークの林氏、カフェ・カンパニーの楠本氏、渋谷区の長谷部区長など、各分野の第一線で活躍するメンターたちの存在です。

これらの例に共通するのは、クリエイティブプロデューサーのチームが長期的なコミットメントをもって活動を支えていることです。クリエイティブゾーン形成に欠かせない要件だと言えます。

最後に、プラチナトライアングルや多摩川流域エリアの発展について、いくつかの論点を提示したいと思います。まず、1つ目は、エリアならではの説得力あるテーマが必要だという点。渋谷とは異なり、自然体でイノベーターたちが集結する場所では必ずしもないので、エリアの持つユニークなアセットを活用して「ここでやる理由がある」と言えるテーマを設定する必要があるでしょう。

2つ目は、クリエイティブシティやイノベーションというキーワードに囚われずに考えれば、水辺を生かした QOL(Quality of life)の高い居住空間をつくれる場所であること。 3つ目は、多摩川沿いに自由に移動できるような動線と交通システムを作ること。

そして4つ目が広域連携の視点です。ウォーターフロントをテーマとするのであれば、多摩川だけでなく、羽田空港の外側の東京湾もセットで考えていきたい。羽田空港やエリアに乗り入れる各鉄道会社、関連する不動産会社なども巻き込んで、広域の視点から構想していくと、さらに可能性が広がるのではと思います。

NEXTOKYO 「ポスト 2020」の東京が世界で最も輝く都市に変わるために(日経 BP 社)
梅澤高明(著), 楠本修二郎(著) 2020 年東京五輪・パラリンピックは日本経済、最大の起爆剤。「ポスト 2020」キーパーソン12 人が NEXTOKYO の全体像を初めて明かす。

第 3 回円卓会議からの進捗報告
「多摩川流域圏構想の
進捗について」

クリエイティブ・シティ・コンソーシアム事務局長
東京急行電鉄株式会社 都市創造本部
山口 堪太郎

昨年7月の円卓会議にて、プラチナトライアングルに多摩川流域を加える提言を涌井先生・東急電鉄東浦氏から受け、モノづくり産業・それを牽引する企業・研究教育機関等の資源が点在し、羽田・リニア・外環など都市基盤が整備されるポテンシャルに対する期待の声をみなさまからいただきましたので、その後の1年間の活動を報告いたします。

9月に涌井先生、流域の行政・大学・企業が集う勉強会を設立。11 月にイベント『TAMAGAWA OPEN MEET-UP』を開催し、世の期待や反応を確認した上で会を重ねました。勉強会は、スーパーメガリージョンも意識し、クリエイティブ・シティ・コンソーシアムの設立趣旨に沿う、「日本及び首都圏の成長をけん引する地域となる」ことを目的とし、「公共空間」・「公学民連携」・「規制突破」といった過去の円卓会議のキーワードも踏まえた長期・中期のビジョンを描き、バックキャストで短期的なアクションを積み重ねていきながら、都市政策上の位置付けを得ていくことを役割としています。

長期ビジョンとしては、「日本の成長・発展をリードするクリエイション拠点の形成」を掲げ、その実現のために以下の3つの要素を挙げています。

ポイントは、クリエイションが起こりやすい自然環境の中での生活圏・経済圏作りを両輪に廻すことですが、昨今の地震・豪雨が続く中、SDGsの目標達成や災害に対する強靭性・レジリエンスとリンクさせることも重要です。その実現のため、高度なクリエイションサイクルを起こせないか。これは日本中で考えられているモデルですが、東京圏の中でも自然環境が豊かでQOLが高いこのエリアで資源・産業との融合による個性を出せればよく、都市基盤整備との連動としても例えば、堤防の整備に、働く・遊ぶ・暮らすための機能を混ぜられないかという議論がされています。

その実現に繋げるための中期ビジョンが「川とともに働き、遊び、育て、活きる「」循環経済時代の流域地域経済作り」で、ポイントは公共空間活用とテクノロジーを掛け合わせで多くのプレイヤーを巻き込むことです。

それをイメージに落としたものが「2025年多摩川流域のアタリマエ」で、焚き火バーやアウトドアオフィスに着手しました。今後も、ゆるスポーツとしてのウォーキングサッカー、夜の川辺との相性のよいイルミネーション、産業面との親和性でドローン特区、川沿いの移動を助ける自動運転やシェアサイクル、地域経済化のためのブロックチェーンなどを検討します。巻き込みを加速させるため、ティザーサイト「タマクロス」http://www.tama-x.comをオープンします。本日のテーマに即し、東京圏を引っ張るための要件を皆様から幅広くご教示いただき、今後の活動に還元できていければと存じます。

知のプラットフォーム

知が集積するユニバーシティこそ、多様なヒトが交わり、創発する知の起点、プラットフォームになりうる。ポイントは創発を通してヒトが育つこと。

A.T. カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤 高明氏

優秀な人材の集積は、日本にとってもっとも重要なテーマだ。人材育成の視点から、各大学には大きな期待をしている。それに加え、外国人の優秀な人材をどれだけ集めることができるのかがカギになる。
例えば、外国人は高度人材であっても、どこかの企業に就職しないと就労ビザが取得できない。しかし、新しいクリエイティブクラスの何割かは、フリーランスでやりたい、あるいは自らクリエイティブファームをつくりたいという人たちだ。今のままでは彼らは日本に長く居られない。彼らが日本に残れる状況をつくらなくてはならない。

東京都市大学 学長
三木 千壽氏

海外で成功している都市には、優秀な人材が集積している。たとえば中国では、すでに国策として人材の集積を行い、海外で勉強しマスターを取得した人々が、昨年だけで40万人、帰国している。日本では、このような優秀な人材の集積は可能なのだろうか。そして、それを多摩川周辺に集約できるのだろうか。

株式会社三菱総合研究所 理事長
小宮山 宏氏

「センター・オブ・イノベーション」というプロジェクトがある。例えば弘前大学では、医学部が地域の人を2000項目に渡って検診している。これはビッグデータになるレベルの調査で、そこに30社ぐらいが集まり、集積の拠点となっている。集積のベースはどこでもいいのだが、これはやはり大学だからできるのだと私は思っている。
何かやろうとするときに必要なのは、すでにある知識を持ち寄ってくっつけることだと考える。それこそがイノベーションであり、私はそうした集積の枠組みを「超大学」と言っている。超大学の大事なポイントは人が育つということだ。多様なものが混ざり合って、具体的な目的に向かうと人が育つ。このプロセスが大切だ。

造園家/ランドスケープアーキテクト
東京都市大学 環境学部 特別教授
涌井 史郎氏

基本的な知の集積は必要だが、いらない知を捨てるということも重要なのではないだろうか。コップの大きさは変わらないので、どうでもいいものはどんどん捨てていく。そうしないとストレスが溜まっていき、ストレスマネジメントができなくなる。すると、クリエイティブにはならずにイノベーションだけが上がっていくという気がしてならない。

カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
CCC デザイン取締役
天川 清二氏

新しいクリエイティビティを育てるシェアスクール「T-KIDS」を、1年前に千葉県の柏の葉で始めた。現在のクリエイティブクラスが次の世代を育てるという、未来への投資のために。また、私たちは図書館の企画と運営もやっているが、図書館は、老若男女、格差を超えた会話が生まれる場。そういう図書館が核となり、別の何かとつながると新しい創造拠点になるのではないか? 小宮山先生のいう「超大学」ではないが、大学と書店、図書館が融合し、そこで「T-KIDS」のような教育プログラムが受けられる環境が加われば、格差なく、分け隔てなく、しかも自分の興味のあるものをピックアップして選べる知のプラットホームになると感じた。そういう環境が世の中に必要だと思うし、広げなければと思った。

NPO法人CANVAS 理事長/慶應義塾大学 教授
石戸 奈々子氏

梅澤さんのお話を聞いて、技術×文化が大事なのだと感じた。では、どこがそのプラットホームになれるのか? 私も小宮山先生と同じように、それは「学」なのではないかと感じている。先日、学のあり方、大学の在り方が変わっていかなくてはならないという問題意識から「超教育協会」を立ち上げた。超教育協会の役割は、国内外、分野を問わず、横断的なカリキュラムを設計し、人材育成を行うことだ。超教育協会を通じて、こうした役割を果たす「学」の機能の再構築をしたいと考えている。

株式会社リバネス 代表取締役 CEO
丸 幸弘氏

日本がどうあるべきかよりも、世界の課題をどれだけ解決した国になるのかが大切だ。ポイントは知のプラットホームをどうつくっていくのか。ユニバーシティはもともと、小学生でも中学生でも高校生でも、ある目的に向かって学び続けるための場所だった。それが今は小中高大と分かれてしまい、まったく意味のない大学構想になっている。その観点から、大学を知の起点として考え直していくと面白いんじゃないかと思う。新しいうねりをもった人々が異分野で集積して、世界の課題を解決しようとワクワクしながら集うことが重要だと思っている。

共創の場づくり

世代・需給関係も越えて多様性が交わるためには「場」が重要。
今ある資源を活かし、共に働き、暮らし、学べる、オープンな場を増やしていく。

株式会社三菱総合研究所 理事長
小宮山 宏氏

同じような人たちが集まっても、面白いことは起こらない。シニア×学生のように、多様性が混ざる場をつくらなくてはいけない。好例がロボットスクールだ。大学生が子どもに教え、シニアが助太刀する構造になっていて、本当にうまくいっている。
私たちも今「プラチナマイスター」という事業を始めようとしている。これは高齢者に、過去を威張って終わるのではなく、未来の社会をともに考えるマインドを勉強していただき、プラチナマイスターという称号を与えるものだ。このように、多様性を積極的に集めていくことが必要だと思う。

一般社団法人俯瞰工学研究所 代表理事
松島 克守氏

クリエイティブゾーンを形成するためにやるべきはシェアオフィスだ。フロアごとに会社が入っているだけでは、ほとんど交流は生まれない。シェアオフィスであれば人が混じっていく。しかし、今は圧倒的に数が足りていない。
もうひとつはハイテク人材が足りないということだ。新卒もいいが、30代のエンジニアのリカレント教育も大切だと思う。このふたつをプラチナトライアングルでやれば、クリエイティブゾーンの形成になりえるだろう。

一橋大学大学院 経営管理研究科 教授
楠木 建氏

文化の消費生産の特徴は、供給者と需要者が同じだということだ。高齢者はお金を持っている人が多く、消費者だと捉えられがちだ。しかし、供給側が若者に向かって走ってしまうと、そこで供給されるものは高齢者にとっては要らないものばかりになり、本当の文化生産消費のエコシステムにはならないだろう。高齢者でも何かをクリエイトする人がいて、供給側に入ってこられるようにしていくことが、今後の方向性のひとつになってくると思う。

世田谷区 区長
保坂 展人氏

世田谷区は在宅子育て率が高いので、一軒家を改装した子育て広場をどんどん増やしている。先日、この取り組みを利用者に尋ねたところ、全員が区役所や児童館、子育てアプリで知ったと話し、友だちから聞いたという人はひとりもいなかった。かたや、男性の中高年では、2週間誰とも喋っていない人が6人にひとりいるという全国的な統計もある。今後、コミュニティカフェなど、さまざまな形で多世代の住民がクロスし、会話をしていく場をつくっていきたい。また、グローバル競争のなかで、「新しい学力観」が提唱されている。100年先を見据えたときに、子供を基盤に置く場ということが重要になってくるのではないだろうか。

大日本印刷株式会社
専務執行役員 ABセンター マーケティング本部 本部長
北島 元治氏

東京の魅力度が高い理由に書店の多さが入っていた。これだけの多様な書店があるということは、書店はひとつのクリエイティブ、知の集積の拠点になっているということだろう。ただし現在は、その価値が失われてきているのではないだろうか。それをどう再定義し、図書館や大学の知とつないでいくのかが今後の課題だ。知のインフラづくりは、大きな意義を持っている。なんとかこれを活性化させていきたい。

株式会社日建設計 取締役常務執行役員
大松 敦氏

中国の行政関係者を案内することが多いのだが、彼らが一様に舌を巻くのは、日本の公共空間の質の高さだ。特に鉄道と駅、駅と街が一体化した中間的な領域をつくることを、日本は非常にうまくやっている。
それは、多摩川流域でも生かせるのではないだろうか。住宅的なスケールに配慮したスキマ空間、空き家や廃校、空き教室を使ってまちの魅力を深め、流域の自然環境を生かしたブランディングがうまくできれば、外国の方からの人気も一気に高まる。羽田空港と公共交通の結節点にもつながるだろう。そういうところに我々も力を尽くしていきたいと考えている。

A.T. カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤 高明氏

共助的にみんなで子育てをし、未来の教育もそこで提供されているシェアハウスというのはどうだろう。「拡大家族」を一緒につくりたいと思う人たちのチームで、共同で子育てをしているコミュニティは、少なくとも都市部ではまだあまりないのではないかと思う。プラチナトライアングルのどこかにそういうものがあってもいいのではないだろうか。

クリエイティブ人材の育成

行政や専門家、大企業の標準から、ジャンプしたクリエイションを起こしうるのがプロデューサー人材。
ローカルなコミットが彼ら彼女らを解放する。

一般社団法人 Japan Innovation Network
専務理事
西口 尚宏氏

クリエイティブクラスがいるということは、ノンクリエイティブクラスも存在するということを明示的に言っていることにほかならない。若者が頑張れそうな職業がクリエイティブクラスの例示として出されているが、日本にとって大きな課題は、東急沿線にも多数住んでいるシニアの方々が、できるだけ健康で、幸せな人生を生きていけるかではないだろうか。
定年を迎えたらやることが無いではなく、むしろ真逆であるのが理想論だ。そのことと、クリエイティブクラスをどういうふうに掛け算していったら良いのかが私の問いである。

A.T. カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤 高明氏

クリエイティブプロデューサー人材の育成については、結局のところ、いろいろなプロジェクトをどれだけやってきたのかという経験値がいちばん大事な気がしている。基礎は大学や大学院で学べるが、フィールドのプロジェクトを通じた経験、プロジェクトを一緒に進めるチームメンバーやメンターからの学びが何より重要だ。渋谷の100BANCHや二子玉川の夢キャンパスなど、いろいろな場で、刺激的なテーマのプロジェクトを実装するところまでやらせることができるかどうか。また、日本人だけではなく外国人に入ってきてもらうと、外の目から見て、より魅力的な日本をつくっていくことにも繋がるだろう。

多摩大学大学院 教授
紺野 登氏

大学院の生徒がスピンアウトして、空き家対策をやっている。彼女のやっていることを見ていると、プロデュース型の人材は、草の根からどんどん出てくると感じる。今は大企業やいろいろな仕組みが、そういう人たちを抑圧しているのではないか。これを解放する特区をつくり、そこにくることによってシェアリングエコノミー、新しい循環型経済のモデルが始まるといいのではないかと思う。

東京都市大学 学長
三木 千壽氏

クリエイティブプロデューサーは今、どれ位いるのか? また、そういう人材がどのように作られていくかは大変気になるところだ。たとえば東京都市大学 二子玉川 夢キャンパスも、クリエイティブな人材が育つ場にしていく必要がある。どうやったら、もっとたくさんの人が集まるアクティブな場になっていけるかを考えていきたい。

造園家/ランドスケープアーキテクト
東京都市大学 環境学部 特別教授
涌井 史郎氏

日本人はイノベーションに強いと言われているが、ジャンプしたクリエイションには弱い。
今の大企業はコンプライアンスとガバナンスで縛られていて、クリエイションが生まれないと感じている。これからは企業が牽引していくというよりは、個業とどのようにタイアップしていくか、個業の人材をどう育てるかが大変重要だ。

千葉大学大学院 工学研究院 教授
村木 美貴氏

私の専門は都市計画だが、20年先の都市づくりをどうするかと考えるとき、今の規制がこうなっている、こういう条件があるからこうすると、頭で考えながら目標を設定することになる。しかしながら、お話を聞いていて、行政や専門家がハードルがあると思っていることは、じつはクリエイティブクラスの人たちならば解決できることなのかもしれないと感じた。

文化、自然の活用

既にある文化・自然、時間的・空間的資源。
それらを再発見・再定義し、起爆剤を与え、
アクセスさせ、活用すれば、ゾーン形成に繋がる。

渋谷区 区長
長谷部 健氏

東京が他の国際都市に唯一勝てているのは、やはり文化度だと思う。渋谷区も若者のユースカルチャーを含めて、文化度が高いという評価を得ているし、その実感もある。しかし、まだまだ余地がある。そのなかで、区としてできることは、クリエイティブ産業の集積ではないだろうか。そのひとつの答えとして、シェアオフィスは当然あると思う。もうひとつ、大きなチャンスがあると思っているのはナイトタイムエコノミーだ。ナイトタイムエコノミー推進のためにも、周辺自治体や東急電鉄など、プラチナトライアングルとの連携をもっとしていきたいと考えている。

一橋大学大学院 経営管理研究科 教授
楠木 建氏

これからは、すでにあるものの再定義や再発見をすることが、筋がいいのではないかと思う。典型的には、未利用資源の有効利用。たとえば、ナイトタイムエコノミーは時間的な未利用資源、リバーサイドのアウトドアオフィスは空間的な未利用資源だ。さらに、今すでにあって動いているものを再発見・再定義することも重要ではないだろうか。すでに原形があるものを活用できたら、2025年といわず、もっと早い立ち上がりが実現できるのではないか。

造園家/ランドスケープアーキテクト
東京都市大学 環境学部 特別教授
涌井 史郎氏

川崎市に私が提案しているのは、工業地帯にイビザと同じような巨大なクラブをつくるということ。あそこは、音や光を出しても迷惑がかかりづらい。イビザ島には、年間750万人が訪れていることを考えれば、爆発的な文化の発信地になりえるだろう。そして多摩川の上流は、むしろ内面と対話をするようなリトリートに活用したらいいのではないだろうか。

川崎市 副市長
加藤 順一氏

多摩川ならではの説得力が必要だという話があったが、それはやはり自然だろうと考える。多摩川近接のコワーキングスペースやシェアオフィスがあれば、多摩川の環境や癒しの要素が生かされるのではないだろうか。多摩川の環境を活かした研究開発拠点の「殿町キングスカイフロント」は、ストレスマネジメントの観点からも、あそこに集まってきたイノベーティブ、クリエイティブな方々が癒しの時間を持てるという意味で、非常に貴重な空間になっていると思う。

千葉大学大学院 工学研究院 教授
村木 美貴氏

ロンドンのバタシーでは、新しい不動産開発が進んでいる。ここの売りの一つはアクセスだった。ひとつが地下鉄の駅を新しくつくること、もうひとつは、船でテムズ川を都心部までアクセスするということだった。多摩川でも、アクセスの観点で人と水辺が近い使い方ができないだろうか。

大田区 まちづくり推進部長
齋藤 浩一氏

大田区では、多摩川河川敷に運動施設を多数つくっている。これが占める面積は膨大だが、土日は稼働率が高くても、平日は2割程度まで落ち込み、夜間はまったく使っていない。非常にもったいないと感じている。今後はパークマネジメントを取り入れていきたいと考えているが、これは国土交通省の理解がないとできないため、このコンソーシアムを通じて、そうした働きかけをしていくのもひとつの手ではないかと思っている。

コクヨ株式会社 ファニチャー事業本部
TCM事業部 事業部長
坂本 雅彦氏

今後ますます高齢化が進んでいくため、すべての社員がオフィスに出てきて仕事をするのではなく、自宅近くで仕事をするということも起こってくるのではないだろうか。そういう意味では、多摩川流域の水辺は非常に魅力的な環境だと以前から思っていた。その近くにシェアオフィスができたり、公共施設で仕事ができるといったことが可能になると、シニア層の働き方改革につながっていく。環境を変えることで新しい発想が出てくる若手社員もいるはずで、企業自体も活性化していくのではないかと感じた。

都市の未来

東京の未来を牽引する志を持って、まち「ならでは」を活かしたビジョン・ゴールを描き、クリエイティブゾーン形成のためのアクションを起こしていく。

東京急行電鉄株式会社 取締役常務執行役員
髙橋 俊之氏

人口減少が進み、郊外が廃れていくなかで、都市構造は抜本的に変わらざるえない状況になっている。これまではどちらかというと都市政策的、都市計画的なアプローチが中心だったが、今後はこの流域構想のように、産業政策を絡めることが重要だ。多様性と混ざりやすさをもとに、イノベーションやクリエイションが起こりやすい環境をつくる。そのためにも、まずはとにかくアクションを起こしていきたい。
都市そのものは、おそらく駅を中心としたコンパクトシティ化していくだろう。では、コンパクトシティになったその先、そこから外れた部分はどうするのだろうか。コンパクトとコンパクトの間をどう埋めていくのかという議論も必ず出てくる。ダイバーシティ化はまさにこれからのまちづくりのこと。流域構想の取り組みも含めて、多様な人材、多様な考え方を結集していかなければならないと改めて決意した。

NPO法人CANVAS 理事長/慶應義塾大学 教授
石戸 奈々子氏

2020年のオリンピック・パラリンピックでショーケースとして何を見せるのかは、日本として非常に意識していかなくてはいけないポイントなのではないだろうか。それを活かせるかどうかで、日本の今後は大きく変わる。2020年に「これぞ、この次の日本」というものを見せてもらいたいと思う。

株式会社三菱総合研究所 副理事長
本多 均氏

これだけの規模になってくると、誰のためのまちづくりなのかが大切になってくる。エリアのなかでも三軒茶屋、二子玉川、恵比寿などで、拠点開発は先行的に行われている。その結果として周辺で何が起こったのかを学ぶことも必要なのではないだろうか。あるいは世田谷区では、かなり昔から住民参加型のまちづくりをやっている。そのようなことからも学ぶべきことがあると思う。クリエイティブクラスだけではなく、違った目線も入れて、残すべきもの、変えるべきものを峻別するような活動があってもいいのではないか。

東京急行電鉄株式会社 取締役社長
髙橋 和夫氏

1950年代から開発された多摩田園都市は、今や課題先進地となり、改めて多世代が豊かに暮らせるような仕掛けが必要となっている。渋谷では、100年に1度という、世界でも類を見ない再開発中だが、既に交流・創発が起こっている。その中間にプラチナトライアングルや多摩川流域がある。それぞれの地域に合った多様な開発を重ねることで、全体として、日本の中でも稀有なエリアになっていく可能性を秘めていると思う。
昨今、社内外でイノベーションの話がよく出てくるが、それが目的みたいになっていて、その先に何を目指すのかがぼやけていると感じることもある。このコンソーシアムもゴールイメージをしっかり共有し、その実現のために、先端のテクノロジーと我々が持つような顧客接点の掛け合わせなどによって、このエリアで常に新しい化学反応が起こり続けることを期待したい。

A.T. カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤 高明氏

それぞれの街「ならでは」の個性が、本当に大事だと思っている。渋谷区のやること、世田谷区のやること、大田区のやること、川崎市のやることは全部違うべきで、それぞれのまちがオンリーワンになる必要がある。そうすれば、総体としての東京は、本当に魅力的な都市になると思う。多摩川流域の議論にしても、多摩川流域ならではのオンリーワンのコンテンツをどうつくっていくかということは、ぜひ徹底的に突き詰めていただきたい。

多摩大学大学院 教授
紺野 登氏

5月の頭にデンマークのコペンハーゲンにブロックスという施設が出来た。内部にはコワーキングスペースやファブラボやVRスタジオ、デンマークデザインセンターがある。デンマークはそれほど大きな国ではないが、シェアリングエコノミーにふさわしい国や地域に転換していこうという大きな目標をもっている。市民の意識を変えたり、実際にハブになる機能を提供していこうという目的をもってつくられた象徴的な施設だ。 それを東京に引き戻すとどうか? 東京は、放っておくとかなりの経済格差が生まれることになると思う。そういうことに目を向けると、プラチナトライアングルでやることは、東京の未来を語るようなモデルであるべきだ。シェアリングエコノミーや循環型経済、格差のない地域にしていくという大きな使命をもっている。

キーノートスピーカープロフィール

A.T. カーニー 日本法人会長/パートナー
梅澤 高明氏

東京大学法学部卒、マサチューセッツ工科大学(MIT)経営学修士。日米で20年にわたり、戦略・イノベーション・マーケティング関連のテーマで企業を支援。
クールジャパン、デザイン政策、知財戦略、税制などのテーマで政府委員会の委員を務める。クールジャパン機構社外取締役、グロービス社外取締役/グロービス経営大学院理事。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーター。
『NEXTOKYO Project』を主宰し、東京の将来ビジョン・特区構想を産業界・政府に提言。
著書に『NEXTOKYO 「ポスト2020」の東京が世界で最も輝く都市に変わるために』(共著、日経BP社)、『最強のシナリオプランニング』(東洋経済新報社)、『グローバルエリートの仕事作法』(プレジデント社)など。

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